──この映画の中にハリウッドの不思議なガーデンパーティーが出てきますが、マリック監督のハリウッドにおける位置づけとはどんなものだと思いますか?

「彼はあのパーティーをクリエートした。彼のハリウッドに対する本音なのだと思う。彼はハリウッドを否定してはいない。彼の起用するキャストは私も含めてハリウッド俳優と言われる俳優ばかりだし。映画の中で自分の視点によって、ハリウッドを変形したのだと思う。その彼の視点とは、ありきたりではなく、より自由でパーソナルな発想、自分なりの視点や世界観、表現によって成り立っている。彼にはとても独特の世界観があるから。彼のような人が、映画界にいてくれるのは素晴らしい。じゃなかったら、誰が彼のようなことをしてくれるかしら?」

──今年、あなた自身が映画監督としてデビューしましたね。「A Tale of Love and Darkness」という作品を選んだ理由は?

「原作をかなり前に読んだの。原作者のアモス・オズには何度か会ったことがあるのだけれど。読んでいてすぐに映画にしたいと感じた。かなり取りつかれたように魅了されたわ。本の中では、言語について触れる箇所があるのだけれど。そこにまず興味がわいて、その後、さまざまな点に引かれた。家族の関係とか、神話とか、そういったものが、自分の世界観に影響を与えるという点について」

──あなたはイスラエル生まれ、アメリカ育ちですが、イスラエルとパレスチナの闘争が映画に関与しています。政治的な題材を扱うことに躊躇(ちゅうちょ)しませんでしたか?

「なかったわ。あの映画は政治的な映画ではなく、家族についての映画なの。ただ私が、現在のイスラエルの平和運動の創始者たちに、個人的に強い影響を受けていることは否定できないけれど。映画のテーマは家族なのよ。イスラエルの場合、存在するということだけで、政治的な意味合いがあるかもしれないけれど……。でも、私の映画には政治的な意図はないわ」(取材・文 ライター・高野裕子)

週刊朝日 2016年12月2日号