この日程を実現するためには、17日に初会合が開かれた有識者会議が来年春にも提言をまとめ、来年の通常国会で法整備を行う必要があるというのだ。

 だが、有識者会議の出席者の一人はこう困惑する。

「報道はかなり先走っている。会議のメンバーには結論を出す具体的な期限が伝えられているわけではない。『特例法を軸に』検討するなどとも報道されているが、実際は方向性も白紙で、専門家の話を聞いてみるまで何もわからないし、決まってもいない」

 ある政府関係者も、「生前退位」はハードルが高いとして、こう説明する。

「いま政府が苦労しているのは、現行法にある『国事行為の臨時代行』や『摂政』を置く案をなぜ採用できないのか、という理屈づけです。天皇がお言葉の中で摂政案を拒否したのは周知の事実。だが、天皇の政治介入は憲法で禁じられており、『陛下のご希望だから』とは口が裂けても言えないんです」

 そして、2年後に大嘗祭という案に対しても、宮内庁の一部から疑問の声が上がっているという。

「大嘗祭を行うには、特別な水田を2カ所、準備する必要があり、それらは亀甲を用いた占い、『点定の儀』で選定されるなど、準備に非常に時間がかかる。とても間に合いません」(宮内庁関係者)

 一方、自民党の二階俊博幹事長は本誌の取材に「早い段階で陛下のお気持ちに対し、結論を出すことが大事」と語り、菅義偉官房長官も来年の通常国会に生前退位に関する特例法を提出したいという意向を示した。しかし、亀井氏はこう語る。

「幹事長、官房長官は建前論で言っているんでしょ。俺の親しい自民党議員らはだいたい気持ちは一緒だよ。ただ、国民の8割が『生前退位』を支持しているし、みんな選挙をやる身だから、世論を気にする。ダイレクトに言うのは、俺くらいだよ」

 報道どおりに「生前退位」が無事に行われるか、雲行きが怪しいのである。

 そもそも、この問題をこじらせた背景には、皇室・宮内庁と官邸との、水面下の“暗闘”があった。

 事の発端は7月13日夜にNHKが流した「天皇陛下、『生前退位』の意向」との特ダネ。安倍首相は東京・赤坂の「赤坂飯店」で自民党の茂木敏充選対委員長(当時)や党職員らと参院選圧勝の慰労会に出向く車中で一報を知ったという。

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