岩手国体開会式での天皇、皇后両陛下 (c)朝日新聞社
岩手国体開会式での天皇、皇后両陛下 (c)朝日新聞社

 天皇陛下の「生前退位」に向け、政府の有識者会議がいよいよ始動した。だが、一部で報じられている、来年に特例法が国会で成立、2018年に退位のシナリオは本当に実現するのか。水面下では皇室・宮内庁と官邸の思惑がぶつかり合い、暗闘が繰り広げられていた──。

 官邸で安倍晋三首相と一対一で面会した亀井静香衆院議員は9月16日、ある“助言”をしたという。

「私は“サボタージュをしろ”と、晋三に言ったんだ。ただ、陛下が生前退位についてお気持ちをおっしゃった以上は、放っておくわけにはいかない。有識者会議をつくって検討はする。そういうレールで行くが、結論は出してはダメだと。国会に出されたって審議未了、審議未了だよ。でないと国が滅びるよ。晋三は宮内庁のことを気にしていたけど、『宮内庁もあんたの部下じゃないか』と諭したんだ。宮内庁長官と次長にも別の日に会って、『早く、早く(結論を出せ)なんて、官邸にプレッシャーをかけるなよ』と釘を刺してきたよ」(亀井氏)

 清和会時代に派閥の長である安倍晋太郎氏に仕えたことから、息子の安倍首相のことを「弟のようにかわいがっている」という亀井氏。警察官僚出身の亀井氏の持論では、天皇の仕事は「国事行為」と「宮中祭祀」の二つだけで、各地への巡幸や被災地の慰問などの公務は現代になって加えられたものにすぎないという。亀井氏は、こうした公務の軽減こそがあるべき道だと、安倍首相に懇々と説いたという。

 安倍首相もうなずきながら、被災地の慰問などで天皇陛下が膝をついて無理な体勢をとられていることを非常に心配し、自らジェスチャーで示しながら、「人とぶつかったりしてお体に万一のことがあっては大変なことになる」と亀井氏に話したという。

「晋三も、気持ちは俺と一緒だ。まず、陛下の本来のお仕事ではないことは極端に減らすべきだということに、彼もまったく同意していた」(亀井氏)

 この2日後、羽田空港で記者団の取材に答えた安倍首相は、有識者会議について「期限ありきではなく、静かにまずはさまざまな方々からお話を伺いたい」と答えている。結論を出す時期を明示することを避けたわけで、亀井氏が説いた方向性と一致していた。

 しかし、メディアは連日、「生前退位」実現へ向けたスケジュールを盛んに報じている。16日の産経新聞は1面で、天皇陛下が8月の「お気持ち」で触れた、平成30年にあたる2年後の18年11月に、皇位継承の儀礼である「大嘗祭」を行う方向で検討に入ったと報じた。

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