「宮内庁御用達」が“消える”日 その理由とは? (2/3) 〈週刊朝日〉|AERA dot. (アエラドット)

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「宮内庁御用達」が“消える”日 その理由とは?

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伝統や技へのこだわりが込められた名品は消えゆくのだろうか…(※イメージ)

伝統や技へのこだわりが込められた名品は消えゆくのだろうか…(※イメージ)

 昭和天皇のトレードマークだった、一枚のレンズをネジで2カ所とめる「ツーポイント」と呼ばれる縁なし眼鏡をご記憶の読者も多いだろう。

 その愛用品を手がけたのが眼鏡枠メーカーのクロバ(Clover)眼鏡。だが、景気の後退で、2010年に自己破産を申請し、市場から去った。

「クロバは、1937年の創業以来、細部にこだわった逸品をつくる職人集団による工芸品でした。金属の一つの塊を、日本刀をつくるようにハンマーでたたいては伸ばします。弾力性に富み、かつ丈夫なフレームだけに、25年以上愛用されるお客様もいるほどです」

 かつて同社と取引があり、静岡市に店舗を構えるメガネの春田の専務は名残惜しそうに語った。

 一方、戦時中、双眼鏡など光学ガラスから始まったHOYAが開発し、「光を形にするグラス」と称賛されたのがHOYAクリスタル。質の高さを評価され、2003年ごろに、ワイングラスやシャンパングラスなど5千点余りを京都迎賓館へ納めた実績がある。

 同社が手がけるクリスタルグラスの精製、加工技術は業界でも定評があった。だが、主力事業のメガネレンズやIT精密部品の事業と比較するとクリスタル事業は利幅が小さく、09年に事業から撤退した。

 職人たちは熟練した技が求められる宙吹(ちゅうぶ)きの技法を得意とした。その一人だったガラス工芸職人の早川好夫さん(71)は話す。

「高さ1メートル、重さ30キロの花器を、5人がかりで宙吹きで製作したこともあります。これほど高い技術を持つ職人は国内でもごくわずか。事業撤退で職人は散りぢりになり、技術の継承は途絶えました」

 手間をかければ、高価になる。だが、必然的に価格競争に巻き込まれる。入札で業者を決める宮内庁や赤坂・京都迎賓館も同じだ。

 ある宮内庁関係者はかつて、本誌にこう打ち明けたことがある。

「もちろん良い品を購入したい。しかし、あくまでも役所ですから予算は決まっています。業者にはこの数字で、とお願いすることになります」

 業者は看板に恥じぬように、と赤字覚悟で納めるケースも出てくる。

 1880(明治13)年の創業以来、宮内庁宮殿や赤坂迎賓館、天皇、皇后や皇族方へ銀製品を納めてきた宮本商行(東京・銀座)。

 迎賓館や宮殿には、国賓や公賓の接遇用に銀食器やカトラリー類が膨大に納入されている。だが、同社は昭和の半ばに入札から撤退した。営業担当者が言う。


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