「めぶきFG」の新しい看板を前に握手する、同グループの寺門一義社長(左)と松下正直副社長 (c)朝日新聞社
「めぶきFG」の新しい看板を前に握手する、同グループの寺門一義社長(左)と松下正直副社長 (c)朝日新聞社

 全国で地方銀行の再編が進んでいる。このままでは5年後に20行まで減少すると見る専門家もいるほどだ。従来、地域の企業や住民にきめ細かいサービスを提供し、強固な顧客基盤を持っていたはずの地銀だが、そこまで追い込まれた要因は何か──。

 日本の銀行はバブル崩壊後の1990年代、過剰融資による不良債権問題を抱えた。97年に拓銀、98年には長銀、日債銀が破綻。政府が都市銀行に大なたを振るい、再編が加速した。統合による規模の拡大、コスト削減効果などが見込まれ、三菱東京UFJ銀行や三井住友銀行といったメガバンクが生まれた。

 政府は全国各地の地銀・第二地銀の再編にも着手しようとしたが、不動産ミニバブルなどの資金特需もあって銀行業界は息を吹き返し、このときは「笛吹けど踊らず」だった。

 ところが、潮目が変わった。2月に始まった「マイナス金利」だ。地銀の主な収入源は、預金金利と貸出金利の差などの「利ザヤ」と、送金や為替、投信販売などの手数料だが、日本銀行の当座預金に預けた金額に応じ、世間より有利な利子ももらってきた。ここが、マイナス金利のせいで危うくなったのだ。

 さらに深刻なのは、預かったお金を運用するという本業の一角、債券運用への悪影響だ。

 S&Pレーティング・ジャパンの吉澤亮二・主席アナリストによると、地銀が運用する債券の平均的な運用期間は3.5年。満期が来れば、マイナス金利の影響で利回りが低下した別の債券に入れ替えるため、将来得られる金利収入は現在より少なくなる。

 吉澤氏の試算では、地銀がマイナス金利によって減らす利益幅は実施1年目に「対前年比15%程度」。都市銀行の倍だ。

 都市銀行の貸し出し事業では、海外比率が3割近くに達するが、地銀の貸し出しはほぼ国内限定。マイナス金利で被る負のインパクトが都市銀行より大きいのだ。債券入れ替えが進む3年後には、対前年比20%超の減益となる見通しというから驚きである。

 追い込まれた地銀の領地に“巨人”も進撃を始めている。

 もともと銀行業界には棲み分けがあった。都市銀行が大都市と大企業を相手にし、地銀は地方都市と中小企業を領地としてきた。ところが今、都市銀行という名の巨人が、地方に進出し始めているというのだ。

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