
6代目山口組と神戸山口組に分裂して1年。全国で抗争が続く中、元山口組顧問弁護士の山之内幸夫氏が分裂の真相について語った著書『山口組顧問弁護士』(角川新書)が、10月10日に発売される。
これまで、山口組分裂の「真相」についてほとんど語ってこなかった山之内氏。昨年11月に刑事事件で有罪判決が確定し、弁護士資格を失った。代表作『悲しきヒットマン』など暴力団の抗争を内側から描いた数々の作品を世に出した。
「分裂の内幕は話さなかった。弁護士でなくなったこともあり、私から見た分裂について書いてみた」
長く構えた大阪地裁近くの事務所から、移転したばかりの新事務所でそう話す山之内氏。顧問弁護士として30年以上、山口組にかかわってきた。分裂の理由をこう語る。
「ナンバー2・高山清司若頭の、上から抑えつけるような手法、司忍(つかさ・しのぶ)組長の山健組へのトラウマ、ここに起因するように思います」
5代目渡辺芳則組長時代、その出身である山健組(神戸市)は山口組を最大勢力として牛耳り、「山健でなければ山口組にあらず」とまで言われた。
「山健組が大きくなりすぎたので、6代目体制でその勢力を削ぐのが一つの課題とされた。そこで司組長が収監中に名代の高山若頭がトップダウン型の運営をはじめた」
その一例が、日用品の購買だ。水やトイレットペーパーなど指定会社から毎月、購入しなければならない。山之内氏の事務所に大量の水を持ち込む組員もいた。
「購入はいわば強制的だったようです。うちに水を持ってきたのは『なんとか先生から上の幹部に、こんなことやめてほしいと告げてほしい』、そんなサインでしたね」
2011年4月、司組長が出所したが、トップダウンの組織運営は変わることがなかったと山之内氏は指摘する。
「司組長、頑固なんですよね。それと山健組に対するトラウマがあるのではないか」
6代目山口組と神戸山口組、双方とも関係は深い。現在どちらとも連絡がある。
「和解して、なんとか元にと思いますが、現状では難しい。お互いが認め合い、抗争にならないように時間をかけて修復するしかない」
荒ぶる当事者たちに、山之内氏の訴えが届くのだろうか。
※週刊朝日 2016年10月7日号