2度目の調査と時期を同じくして、恵比寿にある広尾病院の移転先として青山が浮上していた。

「昨秋、都の財務局から、『広尾病院を、青山の“こどもの城”跡地に移転させようと思うから、可能性を検討してほしい』という話が突然、持ち込まれました。都の予算というのは、9月頃までには固まりますが、8月末の時点では移転話はなく、改築でいこうという雰囲気で用地の予算も上げていなかった」(都幹部)

 この“空白の1カ月”に一体、何があったのか。

「最後は舛添要一前都知事のトップダウンで青山への移転が決まり、慌てて予算案を作りました」(同)16年1月19日には日刊建設工業新聞が、伊藤喜三郎建築研究所が都から受託した調査で、広尾病院の現在地建て替えは困難、移転改築の必要ありとの結論に至ったと報道。2月から開かれた都議会の予算審議では、広尾病院の問題に関しては、自民党都議ら3人から概略についての質問が出ただけで、予算案は3月25日にシャンシャンと可決された。

都政に詳しいコンサルタントはこう話す。

「都議会でろくろく質問が出なかったのは、病院問題に詳しい人が少ないから。また、条例がらみだと都議も放っておきませんが、条例のからまない予算だと、スルーされがち。都としては、そんなこともお見通しだったのでしょう。今年1月に予算案を出さないといけないから、昨年10月にアリバイ的に調査を別の会社に出し、お墨つきをもらった上で予算を急いで通したのではないか。まさに“伏魔殿”と呼ばれる都庁の体質の問題だと思います」

 都の病院経営本部関係者によると、青山移転の話は、広尾病院で働く医師ら医療スタッフにとっても寝耳に水だったようだ。都内の医療関係者はこう訴える。

「『青山移転』を知り、びっくりしました。事前に私たち医師に何の説明もありませんでしたから。なぜ、都は370億円もの移転予算を決めるまでにわれわれ専門家を集め、改築か、移転かを論議する検討委員会を設けなかったのか。予算が通ってから検討委員会を設けるのは順序が逆でしょう。急いで決めなければされているのかはわかりませんがいけなかった理由があるのではないか」

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