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前触れなく発症か 相模原殺人容疑者の“精神疾患”

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週刊朝日

容疑者の“精神疾患”とは…(※イメージ)

容疑者の“精神疾患”とは…(※イメージ)

 50 分間に 45 人をメッタ刺しにし、死者 19 人、重軽傷者 26 人。抵抗できない重度障害者をねらった犯行だった、相模原・障害者施設19人殺害事件。精神科医で昭和大学医学部精神医学講座教授の岩波明が、精神疾患の観点から容疑者を分析する。

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 加害者に何らかの精神障害があるというのは間違いないと思います。妄想性障害や薬物性精神病性障害などが診断されていますが、こうした精神疾患は兆候があるものではありません。問題行動などの前触れもなく、自然発生的に発症する例が多いのが特徴です。

 過去の事件を考えると、1999年の池袋通り魔事件と類似性があります。池袋の事件でも、犯人による殺害をほのめかすメモの中に、「努力しない人間は生きていてもしょうがない」といった内容が記されていました。この犯人は周囲から孤立し、世間への不満や社会に対する恨みをきっかけに事件を起こしたと見られています。犯人は最初「パーソナリティー障害」と診断され、その後「統合失調症」と診断されたものの、一、二審で「責任能力はあった」とされ、死刑判決が確定しました。

 今回の犯人も、恐らく統合失調症に絡むような、奇異な思考や誇大妄想に陥るベースがあったと考えられます。こうした精神疾患に加え、施設で働いた体験にもとづく恨みや被害妄想などが、犯行につながったのではないでしょうか。報じられる犯行内容を見る限り、衝動的なものではなく明らかに計画的。社会的機能も一定は保たれていたため、責任能力がなかったとは言い逃れできないでしょう。

 大麻の陽性反応が出たという話ですが、大麻だけではあれほどの犯行には及ばないはずです。もし薬物による行動だったとすれば、覚醒剤など他の薬物も使用していた可能性が高いと思います。

 衆議院議長宛ての手紙での、「安倍晋三様にご相談頂けること」という願いなど、特定の人に執着する傾向は、統合失調症の人に見られるものです。

 今回、措置入院のときに食い止められなかったのかという意見も多いですが、現状の措置入院はフォローアップの仕組みが全くなく、警察も司法当局も病院に丸投げしている状況です。病院の判断のみで退院させられるし、退院後の通院については病院が促すだけ。だから本人が通院しなくなれば、それで終わってしまいます。強制的に通院させることは医療機関では難しい。本来であれば警察や司法当局が動かなければならないところだと思います。

 何らかの精神疾患を抱えていて、少なからず危険性がある人を、誰がどこまで、どのように監視するか。これからの大きな課題だと思います。

週刊朝日  2016年8月12日号


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