親子関係でも変わった様子は見られない。2008年3月、高校の卒業式の日にはSNSのミクシィにこう書き込んでいる。

〈今日母さんの怒鳴り声で8時に起きた 下手すれゃ卒業式でれなかったぁ 母さんありがとう〉

 幼馴染(おさななじみ)の友人はこう話す。

「植松はお母さんっ子で、誕生日にプレゼントを買ったりしていた。お父さんにはよく叱られるようで、悪口しか聞いたことがない」

 同じ日のミクシィには、

〈植松聖と仲良くしてくれた全ての人々に感謝です〉

 との書き込みもあった。

 大学入学を前に「調理師免許を取得した」とも書き込んでいる。真偽は不明だが、友人たちに、たびたび料理の腕を振るっていた。

「キャンプでバーベキューとかチャーハンとか作らせたら、確かにおいしかった。プロでもやれると自慢していた」(友人の一人)

 明るくひょうきんなキャラで、多少はワルぶっていても快活な少年……そんな人物像が浮かぶ。

 進学した中堅の私立大では教育学部に進学、初等教育を専攻し、小学校教諭を目指した。近所の人には「父が教員だから自分も教員になりたい」と語っていた。友人たちも、植松容疑者は根っからの子ども好きだったと口をそろえる。

 大学1年の夏ごろには、八王子市内の学童保育で指導員補助のアルバイトを始める。ミクシィにも〈教師になるためにはとても良い経験になるので頑張ります〉と意気込みを綴っている。アルバイトは3年生の終わりまで続けた。

 ある友人は植松容疑者から「バイトの最終日に子どもと別れる時は泣いた」とのメールを受け取ったという。

 ただこのころ、両親だけが都内のマンションに引っ越している。転居の理由を近所の人たちに聞くと、「母親が野良にえさを与えて近隣とトラブルになったから」という説のほか、「聖君が入れ墨を入れたことに両親が怒ったから」という話もあった。

週刊朝日  2016年8月12日号