「でき損ないの増税先送りのシナリオは、幕が上がる前から結末が見えていた。公明党に配慮して、ダブル選挙に慎重だった菅さんに対する怒りが麻生さんにはある」

 かつて鉄の結束を誇った3A(安倍、麻生、甘利明前経済再生担当相)+S(菅)のカルテットが崩れた今、菅氏と麻生氏の確執は深まっている。

「増税先送りのための14年末の衆院解散、公明党が言いだした軽減税率導入でも菅氏に押し切られ、財務省の親分、麻生さんとしてはおもしろくない。かつて麻生さんと菅さんのパイプ役は甘利さんがやっていたが、失脚して調整役がいなくなった。『菅ごときに内閣を仕切られてたまるか』と嫌みの一つでも言いたくなったのだろう。だが、安倍さんと対立しても勝ち目はないことは、麻生さんもわかっている」(前出の関係者)

 一方、菅氏は今回の“勝利”で、発言力がいっそう増したという。

「首相経験者で、為公会(いこうかい)の領袖の麻生さんと違い、無派閥で秘書上がりの菅さんは、安倍さんという主人がいて初めて力を持ち得る。ダブル選に反対し、増税先送り派だった二階さんとガッチリと組み、絆を強めた。創価学会副会長と、公明党を通さずに話ができるパイプを持つ菅さんに二階派がバックにつけば、ポスト安倍も狙えると色気を見せ始めている」(官邸関係者)

 では、肝心の首相はポスト安倍についてどう考えているのか? 同じ派閥の後輩、稲田氏の名が後継者として挙がるが、周囲には「8年後でいい」と語ったという。

 オバマ大統領の広島訪問のお膳立てをした岸田文雄外相もポスト安倍で急浮上している。

「宏池会を率いる岸田氏はおとなしい人物だが、バックに厄介な古賀誠元幹事長がいる。岸田氏に首相を狙わせる応援団が5月、立ち上がった。誰も信用しない安倍さんは孤独。自分のよき“執事”である菅さんをリリーフにし、院政を敷くことも選択肢の一つだろう」(同前)

 一方、ジャーナリストの歳川隆雄氏はこうみる。

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