海自自衛官が自殺したさわぎり事件をはじめ、自衛官のいじめ訴訟を手掛けてきた弁護士の照屋寛徳衆議院議員はこう語った。

「率直に言って驚きだ。実戦部隊のパワハラやいじめはよく聞くが、衛生科のパワハラによる退職強要は初耳です。捜査権もない研究員が家宅捜索を行うなどもっての外です。代休の管理簿の改ざんは公文書偽造と同行使の罪に当たります」

 A氏に対するパワハラ行為についても、陸幕監部に問い合わせた。「2カ月足らずで教科書の原稿執筆を命じた事実はない」として、次のように回答した。

「改訂は全文を執筆するのではなく、経年変化分を更新する作業です」

 また、3月9日の家宅捜索についても否定したうえで、こう答えた。

「陸自では、持ち出してはいけないデータが持ち出されていないかどうか確認することができます。規則に基づいて昨年3月11日、情報保証担当者2名がご本人の同意のうえでAさんのアパートにおいて、私有のパソコン等の確認作業を行いました」(同広報室)

 だが、A氏は真っ向から反論する。

「私は各部隊に意見聴取しながら、改訂原稿を書きました。執筆期間が2カ月足らずだった証拠もあります。家宅捜索については、情報漏洩が発覚した時の対策を述べているものでしかありません。データ持ち出しの容疑は口実で、第一線救護の勉強をしていたことへの嫌がらせです。実際、私有のノートパソコンも提出済みでした」

 元空自で現在、「自衛官人権ホットライン」事務局長の小西誠氏が言う。

「A氏の家宅捜索は『下宿点検』の名目で実施されたのでしょうが、違法です。自衛隊内の警察組織である警務隊でも許されません」(本誌・亀井洋志)

週刊朝日 2016年6月10日号より抜粋