元ニューヨーク・タイムズ東京支局長マーティン・ファクラー (c)朝日新聞社
元ニューヨーク・タイムズ東京支局長
マーティン・ファクラー 
(c)朝日新聞社

 ネット上での“炎上”が後を絶たないが、外国人の目にはどう映っているのか。元ニューヨーク・タイムズ東京支局長のマーティン・ファクラーは、批判を恐れ、攻撃に屈する日本人に「意見の多様性こそが民主主義のはず」だという。

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 匿名で人を攻撃する現象にうんざりしているのは、日本だけではありません。

 米国では、いまツイッター離れが起きています。匿名で過激な発言を繰り返す人々は、「インターネット・トロール」と呼ばれます。トロールとは、粗野で凶暴な妖精、日本のネット右翼にあたります。人々は彼らのツールであるツイッターに嫌気がさし、身元がはっきりしていて限られた範囲の人に考えを発信するフェイスブックに再び人気が戻っているのです。

 少ない文字数で意見を発信するツイッターを使うことで、鋭く人を刺す言葉が氾濫するようになりました。そこには、相手の気持ちをくみ取るような思慮深さは存在しません。短い単語で人を攻撃する、共和党の大統領選候補者、ドナルド・トランプ氏の人気と無関係ではないと感じます。

 米国では、公的機関もメディアも、多様な意見や異論があるのは、当たり前だと受け止める。しかし、和の文化を重んじる国民性ゆえか、日本は批判を異様に恐れ、攻撃に屈する例が多い。日本の社会も攻撃されることに耐性をつけていく必要があります。

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