ニュース番組の“突っ込み”が足りない? 室井佑月「偏向報道とは?」
連載「しがみつく女」
作家・室井佑月氏は、政府から発表される統計データについて疑問を呈する。
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以前、このコラムで、東京新聞1月20日付の「こちら特報部 首相が誇る数字の疑問」という記事を取り上げた。
たとえば、賃金上昇について。政府が出してくる数字は、経団連調べによるもの。東証1部上場の従業員が500人以上の企業、約250社が対象で、大半が正社員の給料だ。
中小企業も含めた厚労省の毎月勤労統計調査によると、2012年から実質賃金は減りつづけている。
どちらの数字がこの国のリアルかは、いわなくてもわかるでしょ。この国の貧困者はじわじわと増えているのだし。
こういう事実を適当にスルーしてしまう報道が悪い。
政府が数字をあげてきたら、即座に「いえ、こういう数字もあるんです」、そう誰かが突っ込まなければ、ニュースとして成立しない。政府の発表する数字だけを垂れ流すものを読まされる、または見せられるなら、その情報を知らないほうがマシだ。実際の自分の感覚として、景気が良いか悪いか判断したほうがいい。
こういうことはまだまだある。最近、あたしが気になるのは、「国民に安保法制の理解は広がってきている」というような話題だ。菅義偉官房長官などが会見で、はっきりそういっているのを聞いた。
