右傾化が指摘される日本。ネットニュースもそれにつれて右傾化しているが、その怖さを作家の室井佑月氏が危惧する。

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 ふへぇ~! 2月20日の産経ニュース【安倍政権考】に、「甘利元経済再生相の秘書口利き疑惑は、中国によるTPP妨害工作の一環ではないのか?! 政府が極秘に調査」という記事が載っていた。

 なんでも、「今回の疑惑で『建設会社の総務担当者が甘利氏側とのやり取りを告発したことは、建設会社の経営にも大きなダメージが出る可能性も高い』と告発の狙いをいぶかる声もある」そうで、日本政府機関が外国諜報員によるTPP締結への妨害工作で建設会社側に関与がなかったか内密に調べるんだって。

 建設会社の総務担当者が告発に踏み切ったのは、上から目線で下品なおねだりをされつづけ、それに耐えられなくなったからだと思ってた。まさか、中国が絡んでいるとは!

 アベノミクスの不調も、中国のせいでしょう?

 じゃ、宮崎前議員や武藤議員がおかしくなったのも、中国のせいだったりする?

 丸川議員や丸山議員の暴言も、中国のせいかしら?

 産経新聞って、この国の5大新聞だよね。トップは安倍政権と仲良しだし、政府の極秘調査とやらも手に入りやすいのでしょう。ぜひ、さらに詳しい取材をお願いします。

 海外の一国を名指ししているし、甘利問題は国民の税金も絡んだ問題だし、もっと証拠をあぶり出していかないと。

 でないと、甘利さんを庇いたいがための記事であったように見えちゃうわぁ。

 
 あ、産経新聞に喧嘩を売っているわけじゃないから。つづきが読みたいといっているだけ。

 なんでか知らないが、産経ニュースはネットニュースのトップに挙げられることが多い。つまり、それを事実としてしまう人がかなりいる。

 ネットニュースを書いている会社の方に聞いたが、右寄りの記事を書くと、ヒット数が高くなって儲かるんだとか。

 その結果、その手の記事が多くなり、それが事実となってしまうような怖さがないか?

 そして、疑問を持つ人間や、口を挟もうとする人間は、「中国(または北朝鮮)の工作員」となる。なぁに、「……との情報を得、極秘に調査しているところ」とつづければ問題ない。

 そういえば、『正論』という雑誌に、室井佑月はもともと何の専門家でもなく、特別な見識があるわけでもないから、公共の電波に出すなってなことを、書かれたみたいだ。

 ありがとうございます、あたしなんかのことを気にかけていただいて。あたしの出ているテレビを観ていただいて。

 何の専門家でもなく、特別な見識などない小物のあたしなどほっといてくれたらいいのに。

 今の政権が許せない人、インテリ層に多くいますよ。ノーベル賞受賞者とか、有名な法学者とか。もしかして、立派な肩書相手じゃ怖い? そういうことを気にするタイプですか?

週刊朝日 2016年3月18日号

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室井佑月

室井佑月

室井佑月(むろい・ゆづき)/作家。1970年、青森県生まれ。「小説新潮」誌の「読者による性の小説」に入選し作家デビュー。テレビ・コメンテーターとしても活躍。「しがみつく女」をまとめた「この国は、変われないの?」(新日本出版社)が発売中

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