裕美子:信長の娘、身内というだけで、特別な感じがします。お市の方もたいてい美女に描かれますよね。

志野:そうですね。

裕美子:お市は新興の秀吉に口説かれてもなびかなかった。男前と言うか女前と言うかそういうあり方が素敵で、余計美しい印象が持たれるのでしょう。

信孝:秀吉は冬姫も口説いたとか、困ったものです(笑)。

志野:お市は(柴田)勝家と共に自害しなくてよかったと思うんです。しかし強い意志をもって死んだ。しかも炎の中でというのもお兄さんに似ている。そこは織田家の血というのか、気高さ、凛としたものを感じます。

裕美子:きょうだいでも有楽斎は少し違うでしょうが。

志野:冬姫は葉室麟先生が書いた小説もありますが、ほかに信長ファミリーで注目すべき人っています?

信孝:どうだろうなあ。私は先祖の信雄を主人公に作品を書いていただけたらと。ずっと情けないやつという扱いだから。

裕美子:名誉を回復してね。

志野:お永様ももう少し史料があれば面白いポジションなんですけどね。

(構成 出版部・水野朝子)

週刊朝日 2015年12月25日号より抜粋