JR東海初代社長が明かす「リニアの先」 (2/2) 〈週刊朝日〉|AERA dot. (アエラドット)

AERA dot.

JR東海初代社長が明かす「リニアの先」

「リニアができてもそれで一段落ではなく…」(※イメージ)

「リニアができてもそれで一段落ではなく…」(※イメージ)

 鉄道よりも前に経営に危機があった各地のバス運行を考えると、状況が理解しやすいかもしれません。大都市圏を除き、自力経営が難しくなった地域では、路線バスがなくなることも珍しくはありません。バス会社が撤退しようとしたがために、必然的に地元でのバスの位置づけを考えざるを得なくなりました。それでもバスは必要との話し合いが持たれ、税金を用いてでも最低限の需要をまかなうコミュニティーバスが走る地域も多くなったわけですね。

 地域づくりの中で、今、鉄道はどの程度の役割を期待されているのか。もしも鉄道が必要なら、国や自治体などと共に経営上の課題をどう解決するのか。各地域の在来線について議論すべき時が来ているようにも思います。地域を訪れると、お客様を一人も乗せていないローカル列車さえ目にすることもありますから。

 将来的な展望というのは課題を考えてこそ見えてくる、と私は考えています。

 民営化し、JR東海になってからの東海道新幹線の改善点を見ても、それが言えます。平成4(92)年に「のぞみ」300系を作って高速化を図る。11(99)年に700系、19(07)年にN700系、25(13)年にN700Aと「のぞみ」の速度や快適性、省エネルギーなどの面を絶えず改良していく。15(03)年に品川に新たな新幹線駅、サブターミナルを造り、利便性を高めると共に乗客数増加を図る。こうした近年の課題は、ほぼ、会社が見いだし取り組んだことです。

 課題を解決することこそが、必要なのです。課題がなければ、自ら作らねばならないとさえ思います。今の東海道新幹線にとってのいちばんの課題は、安全と防災対策の一層の強化です。特に沿線では南海トラフ地震など、大地震の発生が懸念されています。これまでの大地震などの例を教訓にしてかなりの震度まで耐えられるように鋭意対策を講じつつありますが、現実には完全というものには、少しずつ「近づく」ことしかできない。安全と防災対策は、今後も永遠の課題になるでしょう。

 一方では、将来にわたり東京~名古屋・大阪間を長期安定的に輸送できる基盤をつくるにはどうすればいいかという課題もあります。今のJR東海で言うなら、リニアモーターカーによる中央新幹線の実現がそれです。設備更新や輸送力不足や災害時のリスク分散のためには、従来の路線とまた別のバイパス機能が要るのでは、との議論から始まった挑戦です。

 リニアができてもそれで一段落ではなく、その時にはまた新しい課題が出てくることでしょう。より安全性を高め速度を上げるには。よりエネルギーを省くには。そうしたことの繰り返しなのではないでしょうか。課題ばかり見ていて後ろ向きだなと思われるかもしれませんが、それが鉄道のすべてなのです。

週刊朝日 2015年12月25日号より抜粋


トップにもどる 週刊朝日記事一覧

おすすめの記事おすすめの記事
関連記事関連記事

あわせて読みたい あわせて読みたい