「昔であれば、大きな戦争で世界のスクラップ・アンド・ビルドをして解決していました。第2次世界大戦はその典型。だが今やれば、核兵器の放射能問題などがどこまで拡大するかわからず、グローバル化によって、米国も米国だけ、中国も中国だけで生きていくことは不可能なほど経済的に結びつきが強い。今はあり得ない。政策的に手詰まりなんです」(前出の運用責任者)

 全く違う展開を予想するのは、原田武夫国際戦略情報研究所の原田武夫代表取締役だ。

「アライアンスパートナーが分析した金融データとあわせて定量分析をすると金価格は1月半ばに崩落する。これは利上げが12月だけでなく1月にもあるということです。実は中国が米国債を大量に売り始めたんです。一方、日本はもちろん、産油国も原油安で米国債の買い手になれない。金融商品としての価値を上げるには利上げしかない。利上げでローン金利の上昇や新興国危機も招くが、それどころではない米国が、捨て身の一手に出たとみていい。この結果、安全な円が買われ、強い円高になる可能性が出てきています」

 米国が連続で利上げすれば世界同時株安もあり得るという。

 今月発表のあった日本のGDPは2四半期連続でマイナス成長。海外ならば連続マイナスは「景気後退」を意味するが、そんなアナウンスもなく「粛々」とアベノミクスは「第2ステージ」に入っているらしい。前出の中原氏は笑う。

「安倍政権は今、来夏の参院選で勝つことしか頭にない。実は17年春の消費増税は再延期をしたいと考えています。(実施を見直す景気条項はないが)選挙で信を問うと言って、衆参ダブル選挙もありうる」

 史上例をみない金融緩和の出口を探る米国の一方、選挙を軸に政策が決まるニッポン。ブレーキがないのは金融だけではない。

週刊朝日  2015年12月4日号より抜粋