松坂:私ね、15年前にサントリーホールで初めて朗読劇「天守物語」をやったときに、誰もやってくれないから、仕方なくプロデューサーをやったんです。高嶋政伸さん、松金よね子さん、小椋佳さんが出てくださって。それで公演の2週間くらい前に「切符何枚売れた?」って聞いたら、20枚しか売れてないって。

林:えっ!

松坂:売るの忘れてたんです。どうしようって泣きべそかいてたら、松金さんに「新聞社に記事を書いてもらうしかないわよ。電話しなさい」って言われて電話して……。

林:自ら? 直接? 「松坂慶子です」って?

松坂:「松坂慶子と申します。実は今度朗読劇をやるんですけど、お話聞いていただけますか」「聞くだけでいいんですか」「聞くだけじゃ困るんです。記事を書いてもらいたいんです。2週間後なんですけど、切符売るの忘れてて……」って書いてもらって、何とか満席になりました。

林:松坂さんから電話があったら、みんなすぐ駆けつけちゃいますよ。収支決算もうまくいったんですか?

松坂:それはダメでしたけど、お席が埋まったので、一緒に出てくださった方にはよかったなぁと思って。

林:それからはずっと満席?

松坂:そのあとは専門家の方がしてくださるようになったので、満席でもそうじゃなくても、私のせいじゃなくなりました(笑)。

週刊朝日 2015年11月13日号より抜粋