美しいだけでなく、おっとりとした、そばにいるだけで癒やされてしまうようなやさしいオーラをお持ちの俳優・松坂慶子さん。作家・林真理子さんとの対談で、自身が手がけた朗読劇のチケットが20枚しか売れておらず、あせった経験を明かした。
* * *
松坂:私、林さんのご本をときどき拝読していますが、社会や時代を見て深くお書きになってて、私なんか夢の中に生きてるだけなんじゃないかと思ったりしますね。教わることが多いです。
林:とんでもないです。
松坂:林さんの『マイストーリー』おもしろいですね。自費出版をめぐる物語ですが、私も文化交流の機関誌を作っているんです。持ってきたので、見ていただけませんか。
林:はい、もちろんです。
松坂:(取り出して)ニューヨークに住んでたときに、日本に興味のある人とか、子どもたちに日本の物語を朗読できたらなと思って、こんなものを作り始めたんです。
林:すごく素敵。松坂さんが発行元になってるんですか。
松坂:そうなんです。長女が絵を描いたりして、家族ぐるみの手づくりなんです。17年前から始めて最初は「天守物語」(泉鏡花)を選んで、最近は「万葉集」ですね。5年前からは奈良大学の上野誠先生の作品で「万葉集」の朗読をしています。今年は秋にハワイ大学で柿本朝臣人麻呂の万葉歌の朗読をさせていただきます。来年は韓国の大田(テジュン)と釜山の大学でもするんです。
林:まあ、世界中で。
松坂:女優の仕事をしていると、演じ終わって素に戻ると希薄な感じがすることがあったんです。自分の人生が希薄じゃないといいなあと思いました。芸能界とは違う仲間や先生と出会えて、楽しいです。
林:松坂さんって、プロデューサー的な能力もおありなんですね。