ややこしい人間関係は、「親戚付き合い」もしかり(※イメージ)
ややこしい人間関係は、「親戚付き合い」もしかり(※イメージ)

 人付き合いは大切。だが、わずらわしい人間関係に悩んだり時間を使ったりしてばかりでは、もったいない。

 ややこしい人間関係は、「親戚付き合い」もしかり。

 ある土曜日、都内の大型商業ビルの一室で、せわしなく電話を受けたり、打ち合わせをしたりする山岸幸司さん(仮名=神奈川県在住・61歳)。ビルの設備管理会社の役員をしており、休日出勤することもしばしばだ。

「父親は5人きょうだい、母親は7人きょうだい。親戚の数がとても多いんです」(山岸さん)

 仕事の合間を縫い、盆に地元の静岡まで帰省し、冠婚葬祭なども律義に出席していたが、20年前に母を、10年前に父を亡くしたことを機に、遠縁の親戚との付き合いを整理した。

「務めは果たしました。役職がついて仕事も忙しくなり、静岡まで行くのも大変。無駄のない付き合いをしましょう、と互いに距離を置くことにしました」

 時間ができることで体の負担は軽くなったという。その一方で、これまでよりも親しく付き合いだした親戚もいる。幼いころから遊んでいた同世代の従兄弟3人だ。

「子どもや妻がいないので、地元にある親の墓を普段見てくれたり、万が一のときに頼れる親戚は大切。気の合う従兄弟とは、家に行ったり飲みに誘ったりと、関係を今までより密にするようになりました。今後、退職して会社付き合いが少なくなると、頼りにする存在だと思います」

 山岸さんは、無駄な関係をダウンサイジングしつつ、新たな関係を構築していったのだ。

 ここが大きなポイントだ。社会に出ているときは付き合わざるを得なかった人を、定年を機にダウンサイジングする。でも、独りぼっちになってしまったら危険。特におひとりさまの場合は、孤立してしまう。そうならないよう、新しい人間関係の構築が必要になってくるのだ。

「老前整理」を提唱している「くらしかる」代表の坂岡洋子氏はこう話す。

「仕事をしていた人が定年退職すると、今までは○○会社の△△さん、だった人が、いきなり上司も部下もいない一人の人間になる。肩書がなくなったときに付き合える仲間がいるか、というのは、その人の第三の人生の豊かさを決める重要なポイントです。特に単身の男性の場合、孤立してしまう人が多いので、定年が見えてきたら積極的に本音で付き合える仲間づくりをしましょう」

週刊朝日  2015年11月6日号より抜粋