八尾自動車教習所の高齢者講習では、機器の使い反応の速さや正確さを測る(撮影/写真部・東川哲也)
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 高齢ドライバーの事故が増える一方、交通事故への厳罰化は進む。14年5月には、交通事故で人を死傷させた場合の罰則を強化した「自動車運転死傷行為処罰法」が施行された。

 無免許、飲酒運転などで事故を起こした場合の刑罰が重くなったほか、高速道路の逆走も対象になった。

 相手にケガを負わせると15年以下の懲役、死亡させたら1年以上の有期懲役(最高で20年)が科せられる「危険運転致死傷罪」が適用される。

「高齢化に伴い、高齢者による事故が増えるなか、相手に傷を負わせ、死亡事故につながったら、本人はもとより、家族も責任が問われます。そんな時代が到来したのにもかかわらず、車の運転についてはどこに相談したらいいのかわからない、という当事者、家族が多いのが実情なのです」(鳥塚氏)

 地方では、車の運転中に行方知れずになる“車での徘徊”は日常茶飯事と言われている。厚生労働省は「認知症施策推進5カ年計画(オレンジプラン)」を実施している。このなかには車の運転対策は盛り込まれたが、省庁間の連携を目指した会議が始まったばかり。

 運転免許の更新は警察の管轄で、市区町村の地域包括支援センターは対応しきれないという相談員が多い。

 そもそも高齢になったからといって、急に免許のことを考える人ばかりではない。ひとつのきっかけになるのが免許の更新だ。

 現在、70歳以上の高齢者は、免許更新前に「高齢者講習」の受講が義務づけられている。そして、75歳以上は3年に一度の「認知機能検査」を受けて、検査結果に応じた「高齢者講習」を受けなければならない。

 認知機能検査で、「記憶力・判断力が低い」第1分類と判断された人が、交通違反を起こした場合に限り、医師の受診が義務づけられている。

 それが、今年6月に成立した改正道路交通法では、第1分類と判断された人は、交通違反の有無に関係なく、医師の診断を受け、そこで、認知症と診断を下されると、免許の停止、取り消しになる。

 改正道路交通法は2年以内に施行されるが、認知症でも74歳以下の人や軽度の人など、網から抜け落ちる可能性がある「第1分類の対象外」の人たちの運転をどうするのか、といった課題が残っている。

 月刊誌「JAF Mate」が13年に行った「認知症と運転についてのアンケート」によると、「免許を返納するうえで、あなたが最も納得できる理由」の問いに対して、「自分の運転が危ないと感じた」と答えた人が44%にもなった。

 自分の運転が危ないと認識することが「運転を考える」手始めとなる。

 JAF(日本自動車連盟)では各地でシニアドライバー向けの講習会を開いている。

「ドライバーは自分の運転は大丈夫、と過信しがちですが、早い時期に自身の運転がどんな状態にあるのか、講習会などでチェックすることをお勧めします」(八尾自動車教習所地域安全推進課の浅田克子課長)

週刊朝日 2015年10月2日号より抜粋