妻:音作りを模索してると、さっとそばに来て、ぱっぱっと的確なアドバイスをくれる。それがホンチ(夫)でした。私自身も気づかなかったような、「私、こういう音にしたかったんだ!」っていうところを引っ張り出してくれる。なくてはならない存在になっていきましたね。

夫:だんだん、僕のギターが曲作りのベースになっていったしね。

妻:でもね、本当に変な人だったんですよ。会うたびに隣へ来ては「好きだ。付き合ってくれ」って。

夫:そりゃ最初は、尊敬するところから始まったんですよ。あのころ、自分で曲を書いてロックバンドを引っ張っていける女性アーティストはいなかったし、今もそんなにいないんじゃないかな。携帯もメールもなかったから、思いはすぐに伝えないと。毎回「会ったときが勝負!」(笑)。

妻:仕事仲間ですから、やりづらいと思ったこともありますよ。「いやいや……」って、笑ってはぐらかしたりして。ああ、私が男だったら、純粋に同志として音楽に向き合えるのに!って。でも、あれだけ毎日好きだって言われれば、ねぇ(笑)。私は彼のギターが大好きだったし、私の目指すサウンドを奏でてくれる人。大好きな音を出す人が好きだって言ってくれてるのに、断る理由はありませんでした。

妻:当時は交際はおろか、男女が一緒に行動してるってマスコミに漏れるだけでも大騒ぎでした。

夫:今みたいな「でき婚」なんてしたら、即、芸能界から干されちゃうよね。

妻:愛の歌を書け、歌えっていうくせに、実際の恋愛はするな、ですから。

夫:そんなの、書けるわけがないよね。

週刊朝日 2015年7月24日号より抜粋