さらに昨年11月には旧薬事法の改正など再生医療推進のための法律を整備した。

 国による医療研究支援を行う日本医療研究開発機構(AMED)の菱山豊執行役は言う。

「これらの法律によって、安全な再生医療を自由診療や臨床研究で受けやすくなりました。また、再生医療医薬品として製造販売の承認がスムーズになり、保険診療でも受けやすくなります」

 再生医療ビジネスへの製薬企業参入の決定打となったのがこれらの法律だ。

 菱山執行役は続ける。

「これまで大手製薬会社は、再生医療の研究からビジネスにつなげるところを積極的にはやってきませんでした。ところが今回の武田と京大の提携は、それが大きく変わることを示しています」

 今年4月、製薬業界を揺るがすニュースが飛び込んできた。武田薬品工業が、山中教授率いる京都大学iPS細胞研究所とタッグを組んだのだ。iPS細胞を使った再生医療医薬品の開発に本腰を入れる。

 10年間で200億円の研究費をiPS細胞研究所に提供するほか、同社の研究施設や研究員もフル稼働させて糖尿病や心不全などの治療薬の開発を急ぐ。

 製薬企業として先陣を走る大日本住友製薬、業界の雄として期待を集める武田薬品工業のほか、他業種から転換した富士フイルムが注目だ。同社は、13年、再生医療ビジネスへと大きく舵を切った。

 昨年、日本で唯一、再生医療製品を製造・販売するジャパン・ティッシュ・エンジニアリング(J―TEC)を買収。同社が手がける、やけどの治療に使う、細胞を培養した皮膚や、けがで欠損したひざを修復する軟骨といった再生医療製品を手にした。

 さらに今年に入り、iPS細胞の技術ライセンスも押さえて、本格的にビジネスに乗り出した。5月、iPS細胞の大量生産技術を持つナスダック上場の米ベンチャー企業「セルラー・ダイナミクス・インターナショナル」を約330億円で買収したのだ。

 戸田雄三取締役・専務執行役員は、こう話す。

「再生医療はマルチな産業技術が必要です。技術の自社開発も進めながら、再生医療で事業を拡大していきたいと考えています」

 役者はそろった。再生医療革命の舞台の幕が開こうとしている。

(本誌・長倉克枝、平井啓子)

週刊朝日 2015年7月10日号より抜粋