政治学者白井聡(37)しらい・さとし/1977年生まれ。早大卒、一橋大大学院で博士。現在、京都精華大専任講師。『永続敗戦論―戦後日本の核心』で石橋湛山賞を受賞。7月21日には『マンガでわかる「永続敗戦論」』(朝日新聞出版)が発売予定(撮影/写真部・植田真紗美)
政治学者
白井聡(37)
しらい・さとし/1977年生まれ。早大卒、一橋大大学院で博士。現在、京都精華大専任講師。『永続敗戦論―戦後日本の核心』で石橋湛山賞を受賞。7月21日には『マンガでわかる「永続敗戦論」』(朝日新聞出版)が発売予定(撮影/写真部・植田真紗美)

 国土が焦土と化した太平洋戦争の敗戦から、まもなく70年。日本は奇跡の復興を成し遂げて経済大国の仲間入りをした。だが、右肩上がりの経済成長は終わり、時代の先行きは見えない。私たちはどこに向かって歩めばいいのか。その道標となりうる戦後論について語るのは、政治学者の白井聡(37)だ。

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 私の世代は、バブル崩壊後の「失われた10年」の影響を受けた「ロスト・ジェネレーション」と呼ばれています。当時、「第二の敗戦処理が必要だ」ということが言われました。

 ただ、私はそこに違和感を覚えました。では、1945年に破滅的な敗北をした「第一の敗戦処理」は、ちゃんとできていたのか。日本は、敗戦を正面から認めず、戦争責任もあいまいにしてきたではないか。まさに、丸山真男の言った「無責任の体系」です。そこに、今の日本が抱えるさまざまな問題の本質がある。私は、日本が敗戦を認めることができず、今でも負け続けているという意味で「永続敗戦レジーム」と呼んでいます。

 具体的な形で表れているのが、領土問題です。竹島も尖閣諸島も北方領土も、そもそもはすべて日本の敗戦処理にかかわる問題です。である以上、日本が敗戦の事実を正しく認めなければ、問題解決に近づくことはできないのです。

 ところが、現在では「領土を侵す外国勢力は討つべし」という、国際的には通用しない主張が「愛国的」として日本国内で受け入れられている。とても悲惨な状況です。

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