閣僚スキャンダルに見舞われながら、高い支持率をキープする安倍政権。自民党内では「早期解散」が囁かれ始めた。第1次政権で抜けなかった伝家の宝刀。安倍首相の決断はいかに。

 安倍首相は予算委で「解散は今のところ全く考えていない」と否定したが、ある副大臣は「当然検討している」と指摘する。

「総理は普段から内閣支持率を気にしていますが、ここ最近は特に細かに見ている。08年発足の麻生政権が早期解散に踏み切らず、1年近く先延ばしにした結果、総選挙で大敗したことも分析しているらしい」

 第1次安倍政権は1年と短命で、自ら解散・総選挙に打って出ることすらできなかった。

「今後、支持率をアップさせる秘策がない。景気悪化を避けるため、総理は消費税10%への増税を見送る。そしてアベノミクス継続を掲げて信を問う、という具体的な話まで伝わってきます」(副大臣)

 菅義偉官房長官の敏腕秘書官が9月の内閣改造後に横浜の地元事務所に移り、精力的な準備活動をしていることも、「早期解散」説に拍車をかける。

 現在、自民党内で取りざたされる解散時期は三つ。「11月解散、12月総選挙」、「12月解散、1月総選挙」、「1月解散、2月総選挙」だ。

 ベテラン衆院議員は「1月解散説が有力」と言う。

「11月解散は、17日に発表される7~9月期のGDP速報値をみて踏み切ることになる。多面的な分析ではなく、速報値だけで決断したとなれば大きな批判を浴びるでしょう。12月解散1月総選挙では年末年始に有権者の心が休まらない。反発は強いと思います。1月の通常国会冒頭での解散が、最もスムーズな気がします」

 ただしこれもデメリットがある。本来なら1月から始まる新年度予算案の審議が大幅にずれ込むのだ。予算の年度内成立は絶望的。景気への影響も避けられない。だが、

「先に補正予算案を組んで成立。それから本予算案にとりかかり、5月までに成立させる。これなら景気への影響は最小限にとどまる」(前出の議員)という。

 一方、野党第1党の民主党は先月末、枝野幹事長が「早く解散していただけるならありがたい」と、余裕を見せているが、「今解散されると正直困る」(同党中堅議員)というのが本音だ。

「民主党の公認内定者はまだ約130人、維新は約70人。しかも両党だけですでに30選挙区で競合している。頭の固い岡田さんが選挙担当の代表代行に就任したことで、なかなかすみ分けが進んでいない。もう少し調整の時間が欲しい」

 閣僚のダブル辞任後も粘り腰を見せる安倍首相。来年1月に伝家の宝刀を抜くのか。

週刊朝日 2014年11月14日号より抜粋