熾烈な国際特許戦争と日本の政策の危うさ 〈週刊朝日〉|AERA dot. (アエラドット)

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熾烈な国際特許戦争と日本の政策の危うさ

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特許庁の庁舎。大発明が生まれるかどうかも、国の政策に影響される (c)朝日新聞社 

特許庁の庁舎。大発明が生まれるかどうかも、国の政策に影響される (c)朝日新聞社 

 いま、日本の特許制度に大きな変動が起きようとしている。

 特許庁の特許制度小委員会が10月17日、これまで「発明した社員のもの」だった特許の権利を「会社のもの」とする特許法の改正案を示したのだ。

 早ければ、開会中の臨時国会にも改正案が提出される可能性がある。

 日本のこれまでの特許法では、社員の発明についての特許は社員のものとしてきた。それを会社のものにするには、発明に見合う「相当の対価」を社員に支払わなければならない。

 青色LED(発光ダイオード)開発で10月にノーベル賞の受賞が決まった中村修二・米カリフォルニア大サンタバーバラ校教授は2001年、発明の「相当の対価」を求めて元勤務先企業を提訴し、04年に東京地裁の判決で200億円の請求が認められた(高裁では約8億4千万円で和解)。このようにして、サラリーマン発明者の権利は次第に拡大してきた流れがある。

 一方、米国では社員は入社時の契約で発明の特許の譲渡対価の請求権を放棄させられるため、特許の権利は「会社のもの」となる。

 ただし、研究者が自らベンチャー企業を起こして資金を集める仕組みが発達しているため、研究者が発明から莫大な利益を得ることは珍しいことではない。

 今回の特許法改正案では、何らかの形で社員へ発明報酬を支払う制度を義務付けることなども検討されているが、今と同程度の対価を得られるかは不透明で、発明者の権利が弱体化する可能性が高い。

 中村氏は本誌の取材に対し、特許法改正の動きについてこう憤った。

「法改正には反対です。私の裁判を通じて企業に勤める研究者の待遇が良くなってきたのに、大企業の言うことを聞いて会社の帰属にするというのはとんでもない。研究者が起業しやすいシステムをきちんと整えてからにしてほしい」

 民間企業の研究者が危機に直面している一方で、大学では状況がかなり違う。04年4月に国立大学が法人化したときに、特許は原則として大学側に帰属するようになった。

「大学の特許制度は日米とも似ています。特許は大学のものですが、特許ライセンス料の半分近くが研究者に入ってくる。研究者にとっては良い環境です。一方、民間企業では研究者が取得した特許で自社で製品を作ってもライセンス料は入ってきません。大学と企業では、研究者の待遇に大きな格差があるのです」(中村氏)

 それでは日本の大学の研究者は守られているのか、というとそう単純ではない。日本の最先端の技術は、海外のベンチャー企業などを相手に日々、激しい特許獲得競争にさらされているのである。

 iPS細胞の開発でノーベル賞を受賞した山中伸弥氏が所長を務める京都大学iPS細胞研究所(CiRA)の高尾幸成知財管理室長がこう語る。

「日本の大学では、研究者が実験や種々の書類作成の合間をぬって特許出願に必要な書類を作成しているのが現状です。それでは戦略的に特許を取得することが難しいので、大学で発明された技術の新規性を見極め、特許出願戦略を考え、出願を行う知的財産の専門家が不可欠と考えています」

(本誌・小泉耕平)

週刊朝日  2014年11月7日号より抜粋


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