川内原発 (c)朝日新聞社 @@写禁
川内原発 (c)朝日新聞社 @@写禁

 御嶽(おんたけ)山(長野県・岐阜県境、3067メートル)の噴火は、想像を絶する被害が明らかになりつつある。今回、改めて浮き彫りになったのは噴火予知の難しさだ。御嶽山の水蒸気噴火だけでなく、マグマ噴火ですら予知する技術は確立できていない。

 噴火は予知できる、という考えはもはや幻想だ。だが、その幻想に寄りかかって防災計画が策定され、行政の方針が決められている。その最たるものが、政府が進めている九州電力川内(せんだい)原発(鹿児島県薩摩川内市)の再稼働だろう。

 川内原発の周辺には、数万年に1度、カルデラ噴火と呼ばれる超巨大噴火を起こす地帯が複数存在する。約3万年前の姶良(あいら)カルデラの噴火では、南九州全域が火砕流にのみ込まれた。この規模の噴火が起きれば、川内原発も壊滅的な被害を免れない。

 こうした危険性が指摘されている中で、原子力規制委員会は9月10日、川内原発の安全対策は新規制基準を満たすとして設計変更の許可を出した。カルデラ噴火の可能性を「十分低い」とし、火山活動のモニタリングで前兆があれば、核燃料を運び出すなどの対応をとるというのだ。

 規制委は8月から火山学者らで検討チームを作り、モニタリングの方法などについて議論を始めているが、火山学者たちからは異論が噴き出している。

 8月の第1回会合では、予知が可能だという根拠にフランスの火山学者ティモシー・ドゥルイット氏の論文が使われていることに、火山噴火予知連絡会(噴火予知連)会長の藤井敏嗣・東京大学名誉教授が疑問を呈した。藤井氏が語る。

「この論文はギリシャのサントリーニ火山で3500年前に起きたカルデラ噴火について研究したもので、他の火山でも同じ現象が起きるとは限らない。巨大噴火の10~100年ほど前から地下のマグマの量が徐々に増えるので地面の隆起を観測できるというのですが、マグマが下方向に成長すれば、地面が隆起しないことも考えられる」

 マグマの増加を観測できない場合もあるとなれば、カルデラ噴火の可能性が「十分低い」という前提自体が怪しくなる。9月の第2回会合で藤井氏がそう指摘すると、進行役の島崎邦彦・原子力規制委員会委員長代理(当時)はこう答えた。

「そこまでさかのぼって全部ひっくり返してしまうと、この検討チーム自体が成り立たなくなると私は思っていますので、現状から出発していただきたいというのが私の考えですね」

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