原発再稼働裁判 室井佑月「儲かることが国富じゃない」と怒り 〈週刊朝日〉|AERA dot. (アエラドット)

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原発再稼働裁判 室井佑月「儲かることが国富じゃない」と怒り

連載「しがみつく女」

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 5月に福井地裁で3,4号基の運転差し止めを求めた住民の訴えが認められた大飯原発。しかし、関西電力の八木誠社長は27日の会見で再稼働する可能性を示唆。こうした振る舞いに作家の室井佑月氏は「儲かることが国富なのか」と呆れている。

*  *  *
 5月28日付の東京新聞の朝刊に、「大飯原発 高裁判決前再稼働も 関電社長『条件整えば』」という記事が載っていた。

 関西電力大飯原発3、4号機の運転差し止めを求めた住民の訴えが5月21日、福井地裁で認められた。が、関電はすぐ控訴した。

 関電の八木社長は、「基本的にはそういう(再稼働するという)考え。控訴したので判決は確定していない」といっているらしい。

 なんでも判決が確定する前に強制執行が可能な仮執行宣言がついてないから、原発の再稼働は可能ちゃ、可能らしい。

 ま、関電側は判決言い渡しの法廷に弁護士を含め全員欠席したというから、はじめから法の裁きなんて関係ないね、と思っていたのか。

 原子力規制委員会に安全宣言されればOKって? 委員に元日本原子力学会会長を入れちゃったりしてるのに?

 八木社長は、樋口裁判長の判決文を読んでいるわな。読んでどう思ったんだろ。なにも感じないか。

 樋口裁判長の判決文、

「人格権は憲法上の権利であり(13条、25条)、また人の生命を基礎とするものであるがゆえに、我が国の法制下においてはこれを超える価値を他に見出すことはできない」

 とはじめに人格権を出し、つまり人格権は経済活動より上位にあると、堂々と論じたのだ。もちろん、予測できない大規模地震の説明等もきちんとなされていた。

 あたしはとても感動した。が、やっぱりそう感じないという人もたくさんいるわけで、樋口裁判長の判決は賞賛と批判とどちらも浴びている。

 ある新聞は、国民の声として賞賛と批判を載せ、どちらかというと批判寄りという書き方をしていた。賞賛の声もあるのに、見出しは「大飯原発判決 『差し止めは亡国の素人判断だ』」。なんて卑怯な、と思ったのはあたしだけ? 国民の声じゃなく、堂々とうちは原発推進派なんでといえばいいじゃん。中立ぶるところがイヤらしい。

 ある週刊誌は、裁判に来ていた菅直人元首相が「勝った、勝った」と大ハシャギしていた様子から滑稽に書いた。

 脱原発派はこういう人たちであるという印象操作か。菅さん本人が、そういう残念なことに使われてしまいがちな人であると、自覚してくれ。この先も長いんだから。

 そう、この先もきっと長い。樋口裁判長が判決の中に持ち出した「国富」という言葉。彼は、「豊かな国土とそこに国民が根を下ろして生活していることが国富」といい切ってあたしはそこに感動したが、そうは思わない人がいるのも事実。誰かを犠牲にしても、なんなら戦争したって、儲かることこそ国富だと思ってる人も多い。そう思いこんでる人のほとんどが犠牲になるだけで儲からないのに。なぜ、わからないかな。

週刊朝日 2014年6月20日号


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室井佑月

室井佑月(むろい・ゆづき)/作家。1970年、青森県生まれ。「小説新潮」誌の「読者による性の小説」に入選し作家デビュー。テレビ・コメンテーターとしても活躍。自らの子育てを綴ったエッセー「息子ってヤツは」(毎日新聞出版)が発売中。

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