2012年に新技術導入も 歯周病ケアがきっかけの大人の歯科矯正 〈週刊朝日〉|AERA dot. (アエラドット)

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2012年に新技術導入も 歯周病ケアがきっかけの大人の歯科矯正

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 見た目を美しくする目的で受ける人が多かった大人の矯正歯科治療。しかし最近、機能の維持や歯周病予防、高齢になっても自分の歯を残す目的で矯正治療を受ける人が増えてきている。2012年には新しい技術も導入され、治療の可能性が広がった。
東京都在住の村瀬和夫さん(仮名・59歳)は39歳のとき、歯ぐきが赤くなり出血もあったので歯科を受診。歯周病と診断され、治療を始めることになった。

ところが、3カ月治療をしてもあまり効果が上がらない。通常の歯周病治療では改善されないと判断した歯科医師は、村瀬さんに、のむら矯正歯科を紹介した。

「村瀬さんは顎に対して歯が大きいために凸凹になった叢生(いわゆる乱杭歯)で、歯ブラシだけでなく、歯科で歯石を取る際に使うスケーラーという器具も歯間に入らないような状態でした。歯周病の治療やケアが不可能なため、歯並びを治してケアできる状態にしないと歯周病の進行を止めることができなくなり、早い段階で歯を失うことになります」 と同歯科院長の野村泰世歯科医師は話す。

 大人になってからの矯正歯科治療というと、見た目の問題を理由に受けるイメージが強いが、最近は村瀬さんのような、歯周病の治療や予防を目的に実施するケースが増えてきているという。とくに重度の叢生や加齢によって歯周病が進行したケースでは、歯を失わないこと、機能を維持することが目的になる。

 歯は歯槽骨と呼ばれる骨に支えられている。歯と歯槽骨の間には歯根膜という組織がある。歯根膜は圧迫すると骨を吸収し、引っ張ると骨をつくる働きがある。この仕組みを利用するのが矯正歯科治療だ。子どもと比べると時間はかかるが、大人でも歯は動き、矯正も可能だ。まず視診とX線で歯や顎の骨、頭蓋骨を診る。さらに噛み合わせなどの口の中の状態を調べ、治療のゴールを決める。そしてゴールに向かって歯をどのように動かすか、綿密な設計図をつくる。

 大人では歯周病やむし歯があることが多く、事前の歯周病治療が重要だ。その後、装置を着けて歯を動かす「動的治療」に入る。

 矯正は歯と歯を結ぶワイヤ、ワイヤを歯に留めるブラケットなどを使う。

 2012年には、薬事法の承認が下り、アンカースクリューという器具が矯正治療に使えるようになった。スクリュー(ネジ)を顎の骨に埋め込み、スクリューと動かしたい歯とをワイヤで直接つなぐため、ほかの歯に影響を与えずに治療が可能だ。場合によっては患者の負担も軽減できるが、誰にでも、どの歯にも用いられるわけではないため、矯正歯科医とよく相談する必要がある。また原則として成人に適用される。

 歯の移動が完了するまでは、3、4週間に1度くらい、2~4年の通院が必要だ。その後、リテーナーと呼ばれる装置を着けて、移動し終わった歯を安定させる「保定治療」を行う。これは矯正歯科治療の中で大きなウエートを占める。リテーナーを着ける時間を短くしていき、動的治療と同期間かそれより長い期間をかけ、保定治療が終了する。

 村瀬さんは上顎で1本、下顎で1本抜歯して動的治療を開始。2年6カ月で歯の移動を完了し、その後の保定治療も終了。矯正治療開始からすでに20年たつが、状態を維持し、歯周病の悪化もなく、1本も歯を失っていないという。

「叢生を治すことで格段にケアしやすくなり、異常にも早く気づくことができます。もちろん、継続的な口腔ケアが不可欠であることは、いうまでもありません」(野村歯科医師)

 また、歯周病ですでに歯が抜けかけているケースに矯正を行い、残った歯をよりよい状態で維持させる治療も増えてきている。

 これまでは、ぐらぐらの歯を抜いてその前後の歯をつなげるブリッジという方法が主流だった。しかし抜いたまま歯並びを整えないと、抜けた部分の歯槽骨がなくなり、隣り合う歯槽骨も弱くなってしまう。

「抜歯のあと残った歯を矯正でベストな歯並びにすることで、犠牲にする歯を最小限にとどめられます。今後は、ブリッジや入れ歯などを用いた補綴治療も含めて、残りの歯をもたせるための矯正治療が増えるのではないでしょうか」(同)

週刊朝日  2014年5月30日号より抜粋


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