国会議員がゴールデンウイークに海外視察をするのは毎年恒例。作家の室井佑月氏は、この慣例“外遊”について言及した。

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 今年のゴールデンウイークは、140人以上の国会議員が外遊へ出かけていた。

 安倍内閣なんて、閣僚18人中15人が海外に行った。国内にとどまったのは菅官房長官と谷垣法相、古屋国家公安委員長の3人だけだ。

 国内で不測の事態が起こったらどうするんだ? なにも起こらない前提なのか? それとも、残った3人だけでも大丈夫だと強くいえる根拠があるとか? だったら、ずっと3人だけでいいんでは?

 ちなみに外遊とは、留学や研究、視察などを目的とし、外国を旅行することなんだという。

 国内にたくさん視察しなきゃならん場所があるだろうに、優雅ですね! そう思うのはあたしだけか?

 3日付の毎日新聞によると、「原子力規制委員会は2日、東京電力福島第1原発で地下水が原子炉建屋に流入し汚染水となるのを防ぐ『凍土遮水壁』について、計画の再検討を東電に指示した」らしい。

 ってことは、またイチから汚染水問題を考え直さなきゃならないのか。

 今年に入ってからもアルプスは故障ばっか、汚染水は毎月1万トン以上増えているともいわれている。そうそう、下請け会社の作業員の待遇だって、改善されたという話は聞こえてこない。

 おーい、国会議員のみなみなさま、故障している危険な原発をうちらに残して、優雅に海外旅行ってどうなのよ?

 それにさ、先月、米国のオバマ大統領が来た時に、「中国は米国の大切な国。日本は友好的な関係を築け」って、命じられていなかった?

 なぜ、安倍内閣のみなさんは一人も中国へ行かないの? これからの外交を考えれば、中国へ視察に行くべきだろう。

 つまり、行きたいから行く、行きたくないなら行かない、そういうレベルなんだろうね。

「通訳・運転手付きの、アップグレードの、特別待遇である旅行に、議員のうちに行かねばなるまい、一般人になったら無理だから」などという心根か。

 一応、外遊という以上、帰ってきてから衆参両議長にレポートを提出しなきゃならないらしいけど、このレポートは随行した議院職員が代筆するのが慣例だとか。

 議院職員が書ける程度のことであれば、議院職員が行ってくればいい話。その方が安上がりじゃん。変なことしでかさないし。

 変なことというのは、自分らの国の国民を飛び越えて、国際的な約束を勝手にしてきてしまうこと。国を背負って、国のお金(税金)で海外へ行くのだから、国、もしくは我々国民にとって、なにかしら有益な結果をともなって帰ってきたんだろうね。全員、その結果と使った金額は妥当なんだろうね。

 ただ海外旅行したいなら、自腹で行って。膨大な年収をあげてるじゃん。

 そのくらいいわなくてもわかって欲しい。あなたたち以外はみな、知っている。

週刊朝日  2014年5月23日号

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室井佑月

室井佑月

室井佑月(むろい・ゆづき)/作家。1970年、青森県生まれ。「小説新潮」誌の「読者による性の小説」に入選し作家デビュー。テレビ・コメンテーターとしても活躍。「しがみつく女」をまとめた「この国は、変われないの?」(新日本出版社)が発売中

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