体にできたケガや手術の痕は、場所によってはけっこう気になるもの。最近は怪我したときに傷痕が付きにくい「湿潤療法」なども普及しつつある。さらに、すでにできてしまった傷痕への対処法も解明されてきて、セルフケアで目立たなくできるようになったという。

 前橋赤十字病院形成・美容外科部長の村松英之医師は、<保湿><遮光><保護>が鍵になると話す。

「自分で対処できるのはできたばかりの傷痕や、あまり大きくない傷痕。傷痕はデリケートで刺激に弱い。保湿剤や日焼け止め剤をしっかり塗り、乾燥や紫外線を避けるのがポイント。衣類や靴などでこすれないようにするのも大事です。根気よく続ければ、少しずつ目立たなくなります」

 市販の傷痕ケア用品もある。皮膚の新陳代謝を促すヘパリン類似物質を主成分とする「アットノン」(小林製薬)だ。ヘパリン類似物質は水分保持作用があるため、乾燥肌などの医薬部外品としても用いられているが、実は傷痕を改善する作用もある。

 2011年3月に販売スタートし、13年度の出荷金額は前年比107%。商品化までの経緯を、同社広報総務部の網盛美紀氏が明かす。

「開発者は30代の女性で、自転車で転んでできた傷痕がなかなか消えず、何とかしたいと考えた末、アットノンができました」

 購入者からは「傷痕があって肌を出すのが恥ずかしかった。少しでもきれいになればと購入した」「塗り続けると皮膚が柔らかくなり、傷痕も薄くなってきた気がする」という声が寄せられているという。

 このほか、保湿剤やオイル化粧品で手術痕を目立たなくするセルフケアを患者に実践してもらっている医療機関も。

 一方、大きな傷痕は形成外科で治せるかもしれない。村松医師によると、飲み薬や塗り薬、注射薬などを使った傷痕治療が行われているそうだ。意外だが、手術で目立たなくする方法もある。「W形成術」と呼ばれる治療法だ。

「シワを横切る傷痕は目立ちやすい。そこで、シワの溝に合わせてジグザグに傷痕のある皮膚を切開した後、真皮縫合(まず真皮を縫い、次に表皮を縫う。瘢痕[はんこん]ができにくい縫合法)します」

 W形成術は形成外科の基本的治療の一つで、健康保険が使える。術後に傷が落ち着くまで時間はかかるが、傷痕で悩んでいる人は、形成外科で相談するといいだろう。

週刊朝日  2014年5月9・16日号より抜粋