ミシェル夫人と母親、2人の娘は3月下旬に中国を訪問。習近平国家主席、彭麗媛夫人と会った(写真:gettyimages)
ミシェル夫人と母親、2人の娘は3月下旬に中国を訪問。習近平国家主席、彭麗媛夫人と会った(写真:gettyimages)

 23日から25日まで日本に滞在する米国のオバマ大統領。訪日は3回目だが、米国大統領としては18年ぶりの国賓待遇。しかし、そこにミシェル夫人の姿はない。「異例」とも言われるこの事態。いったいどんな裏側があるのだろうか。

 ミシェル夫人はオバマ氏の演説内容の最終確認をするなど、一部では“影の大統領”とも呼ばれているが、そんな夫人が「子どもの学校」を理由に訪日を断るのだろうか。前出の自民党ベテラン秘書は「誰も信じていませんよ」と言う。

「日本の国賓待遇は受け入れたものの、夫人を欠席させることで中国側のメンツにも配慮したんでしょう。あの大統領は結局、日本より中国が大切なんだと受け止めた議員は少なくない」

 事実、オバマ大統領の東アジア歴訪に先立って、ミシェル夫人は娘2人を連れて今年3月、中国を訪問している。北京などの学校を訪問。習近平(シーチンピン)国家主席、彭麗媛(ポン・リーユワン)夫人と会い、紫禁城や万里の長城を訪ね、西安の兵馬俑(へいばよう)も見学したのだ。

 すわ「日本軽視か」と身構えてしまうが、インサイドライン編集長の歳川隆雄氏は「それはうがった見方です」と反論する。

「オバマ大統領は形式にはこだわらないタイプなんです。国賓であってもなくても構わない。それよりTPPや集団的自衛権などで安倍首相と最後の詰めをするほうが大事。一種の実務訪問とも言えますから、奥さんは必要ないんです。ミシェル夫人の中国訪問も、大統領の“代理”であり、大統領本人は日本に来たと見るほうが正しいでしょう」

 そこまでオバマ大統領が“実務重視”なら、そもそも国賓にこだわる必要があったのか。テレビプロデューサーのデーブ・スペクター氏が言う。

「日本人だって年末の忙しいときに忘年会はしないはずです。仕事が一段落して宴会でしょう。今のオバマ大統領はロシアや中東でも大問題を抱えています。国賓として招くにはタイミングが悪かったはずです」

 日米外交ウオッチャーも安倍政権の国賓へのこだわりに首をかしげる。

「結局、日米関係には何の寄与もしません。あくまでも対中国、対韓国のメンツだけが理由です。さぞかし米側は困惑したでしょう」

 弾道ミサイル「ノドン」を発射し、国連安保理から非難された北朝鮮は3月下旬、「新たな形態の核実験をする」と逆ギレしたばかり。しかも今回、オバマ大統領は日本の次に韓国を訪れ、さらにマレーシアとフィリピンに向かう。中国の脅威に直面している国という共通点もある。

「安倍首相が大人の対応で1泊2日の日程に同意すれば、むしろ日米関係の安定を印象づけられたのではないでしょうか。しかもマレーシアとフィリピンは中国への不安をオバマ大統領に訴えるはずですから、かえって外交上は有利になったはず」(前出のデーブ氏)

 やはりミシェル夫人の「欠席」は、米国の日本に対するメッセージと読み解いたほうがいいようだ。

「現在の中韓との関係や、靖国参拝に執念を燃やした安倍首相の政治信条を、米国は『わが国の不利益』と判断しています。国賓なのにミシェル夫人が来日しないという異例の事態は、オバマ側の懸念を表立ってではなく、効果的に伝える手段とも言えます」(元外交官で外交評論家の小池政行氏)

週刊朝日  2014年5月2日号より抜粋