著書の全国ツアーにより書店を訪れる機会が増えたという堀江貴文氏。出版業界が売り上げで伸び悩む中、今後求められる新たな書店の姿について、こう考察した。

*  *  *

 相変わらず、著書『ゼロ』の全国無料講演会ツアーを続けているおかげで、全国の書店さんに立ち寄ってはサイン会をしている。その都合上、書店経営者の方にお会いすることも多くなった。

 先日は四国の松山に行ってきた。愛媛県を中心に70店舗以上を構える明屋(はるや)書店は、実は出版流通取次大手のトーハンさんのグループ会社だ。出版不況になって、垂直統合と書店経営の改善をするために社長は送り込まれてきたという。

 社長と話していたのだが、書店経営は私が言っているとおりイノベーションの宝庫のようだ。これまで長い間、ただ本を並べておけば売れる時代が続いたので、逆にいくらでも改善の余地があるというのである。

 この書店が全国に先駆けて行ったのはセブン―イレブンとの提携だ。書店業界でコンビニと組むのは長い間タブーとされていた。雑誌の売り上げを奪われると思っていたからだ。しかし今、雑誌は急速にマーケットが縮小している。特別付録をつけた雑誌が、その付録目当てで売れるというマーケットはあるにせよ、普通の雑誌はどこも青息吐息である。部数が減って広告も減るという悪循環なのだ。むしろそのマーケットは捨ててコンビニに来る客を見込み客として獲得できれば逆に売り上げが伸びるかもしれない。

 TSUTAYAとスターバックスのコラボのような喫茶店コラボシステムは、全国の書店がトレースしている戦略であるが、考えれば、もっといろいろな試みが可能なはずだ。

 渋谷の本屋、「Shibuya Publishing & Booksellers」は、それを実践している。ガラスを隔てた向こうは編集者のためのシェアオフィスになっていて、出版と販売を一体でできるようになっている。本に囲まれて仕事ができるという、編集者にとっては最高の場所だろう。

 また書店スペースはお洒落空間なので、いろいろなファッション誌に撮影で貸し出している。本にまつわる各種雑貨を取りそろえ、本自体もかなりマニアックな品ぞろえだ。なかなか日本では手に入らないパンフレットや小冊子まで置いてあり、またレンタルボックスも営業している。編集者向けのワークショップやトークライブなども定期的に開催していて、渋谷の街づくりのコンサルにまで手を伸ばしている。それで経営が成り立っているのだ。

 これからはキュレーションが大事な時代。出版不況なのに出版点数が一向に減らないのは出版社の都合だが、そんな本を全て取りそろえたら書店経営は成り立たない。ロングテールは、それこそアマゾンに任せて、リアル書店はキュレーションに特化したほうがいい。

 マンガのキュレーションサイト「マンガHONZ」は注目だ。これまで、マンガは雑誌から新しいマンガを探すのが常だったが、その他の手段があってもいい。いつでもスマホでオススメマンガを探せて、それをコーナーを作って扱う書店さんもぼちぼち出始めてきているのである。「マンガHONZ」のような試みがこれからもっと広がると思われる。

週刊朝日 2014年4月25日号