3月20日から23日に行われた米PGAツアーのアーノルド・パーマーインビテーショナルを8位と好成績で終えた石川遼(22)選手。プロゴルファーの丸山茂樹氏は、石川の成長に対して、こう指摘する。

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 米PGAツアーのアーノルド・パーマーインビテーショナルで、石川遼が8位に入りました。

 初日が2位だったために、日本のスポーツ紙なんかでは「米ツアー初優勝へ!」なんて報道がされました。あれはやりすぎですよ。せいぜい「好スタート」ぐらいです。僕らの感覚からしたら。あんなこと書くから、ファンの期待ばかりが膨らみすぎちゃうんですって。

 米ツアーで勝つ確率をくじにたとえたら、宝くじの1等に当たるようなもんですから。よっぽどすべての要素が噛み合わないと、勝てないですよ。この試合だって、初日に10アンダーっていうロケットスタートを果たしたアダム・スコット(豪)が最終日に4オーバーなんてズッコケるんですから。1日で14ストロークも違うゴルフになっちゃうんです、米ツアーってところは。

 いろんなことが、4日間の中に訪れるんです。ゴルフってのは。気候に始まって、そのときの自分のメンタルだったりコースのコンディション、睡眠時間が変わったり、朝起きたときのフィーリングが違ったり。さっきも言いましたけど、すべてのことが絡みあってくるんです。簡単じゃないんですよ。

 初日が終わって、遼自身は「まだ54ホール(3日間)ありますから」って言ったそうですね。これが当事者の本心ですよ。結果的に8位に入ったことを評価すべきです。この試合には、正真正銘の世界のトップが集まりましたから。

 前週の試合で「少し自分の中でいいものが見えた」という趣旨の発言をしてたから、楽しみだな、と思ってました。そこでちゃんと好結果を残したっていうのは、自分の中にいいフィーリングを感じられたからでしょうね。2日目はちょっとコケましたけど、残り2日をこらえましたから。

 8位に入って、「いまが自分のゴルフ人生の中で、いちばん充実してる」ってコメントしたんですってね。まあ、そんなこと言うのはちょっと早いですけどね。まだ遼のゴルフ人生は短いですから。それほどすごい充実感を得たんでしょうけどね。22歳で最高に充実されちゃったら、困っちゃいます。ハハハ。

「日本で(1年に)4勝、3勝したときよりも、ショット、アプローチ、パットも圧倒的に成長した」とも言ったみたい。いいんじゃないですか? そういう手ごたえは。その感触がありながらも優勝できないってとこが、米ツアーのすごさなんですよね。遼の中でダメダメだったときに、日本ツアーでは賞金王になってるんです。どれだけレベルに差があるか、身をもって知ったということでしょう。ここからさらに成長しないと、米ツアーでは勝てない。そこの突破口を自分自身で見つけたとき、初めて優勝が見えてくるんです。

 遼が6年連続のマスターズ出場を果たすには、続く2試合のどちらかで優勝しなければなりません。これは言うまでもなく、厳しいですよ。でも、目標をでっかく持つのは大事なこと。気負いすぎなきゃいいな、と思いますね。自分を冷静に見られる自分を、ちょっとでも置いておいたほうがいい。せっかくいいゴルフができてるんだから、空回りしちゃもったいないよ。

週刊朝日  2014年4月11日号

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丸山茂樹

丸山茂樹

丸山茂樹(まるやま・しげき)/1969年9月12日、千葉県市川市生まれ。日本ツアー通算10賞。2000年から米ツアーに本格参戦し、3勝。02年に伊澤利光プロとのコンビでEMCゴルフワールドカップを制した。リオ五輪に続き東京五輪でもゴルフ日本代表監督を務めた。セガサミーホールディングス所属。

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