非アルコール性脂肪肝炎(NASH)は自覚症状がほとんどないまま進行する。重症化を防ぐには、どのように対処すればいいのか。厚生労働省の研究班で班長を務めるNASH治療の第一人者で、大阪府済生会吹田医療福祉センター総長の岡上武医師に聞いた。

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 日本では、NASHの認知度は十分とはいえません。糖尿病や高血圧症などで通院していても、個々の病気の治療にとどまります。肝臓をチェックされることが少なく、NASHを合併していることが見落とされて進行してしまう例が多くみられます。

 単純性脂肪肝と診断された人は、毎年、健康診断でAST、ALT値をチェックしてください。数値が上がり、線維化マーカーや血小板数にも異常が出たら、NASHの検査を受けましょう。

 単純性脂肪肝とNASHを見分けるには、まず血液検査と画像検査を実施します。血液検査では、「ナフィック・スコア」という判定基準が広く用いられています。

 4点満点で、1点は問題のない単純性脂肪肝。2点はNASHと判断できない状態。3点は8割の可能性で、4点は十中八九、NASHと判断し、3点以上の人に肝生検をすすめます。

 肝生検は肝臓に直接針を刺して組織を採取するので、少し負担のある検査です。これに対して近年、肝臓の線維化などを超音波で測定するフィブロスキャンなどの検査機器も開発されました。からだに負担をかけずに治療の効果を観察するには有用な検査法ですが、病状を正確につかむには、肝生検が必要になります。

 現在、済生会吹田病院で単純性脂肪肝、NASHと診断した数百例の血液データを用いて、NASHを識別できる血液マーカーを検討しています。今後、血液検査の精度がより高まるものと思われます。

 NASHは肥満など生活習慣病を背景に発症するので、背景に見合った薬物治療が必要です。鉄が過剰に蓄積してフェリチン値が高い人は、血を抜く処置である瀉血(しゃけつ)を行うと4〜6カ月で著しく改善します。

 NASHを進行させないためには、食事療法は必須です。野菜をたっぷりとり、食べすぎに注意しましょう。肥満があれば、月に1~1.5キロの減量を目安に適正体重に近づけるよう軽い運動を行ってください。

週刊朝日  2014年4月4日号