「火星に人類を移住させる」 IT長者らはなぜ、宇宙を目指すのか? 〈週刊朝日〉|AERA dot. (アエラドット)

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「火星に人類を移住させる」 IT長者らはなぜ、宇宙を目指すのか?

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 ビジネス界で成功し億万長者になった人たちは、次に何をするのか? 南の島で悠々自適な「隠居生活」などではない。どうやら彼らは「宇宙」を目指すようだ。アマゾンの創業者もヴァージン・グループの総帥も宇宙への夢を馳せる。それどころか、「人類を火星に移住させる」と公言する億万長者まで登場した。ジャーナリストの竹内一正氏がレポートする。

 通販市場を席巻するネット企業「アマゾン・ドット・コム」を作ったジェフ・ベゾスが、宇宙開発企業ブルーオリジン社を設立したのは2000年のことだ。約2兆5千億円もの資産を持つベゾスはブルーオリジン社で、より多くの人々に低価格での宇宙旅行を提供しようと考えた。

 そこでまず、大気圏と宇宙の境界である地上100キロを少し超える高さ「サブ・オービタル」まで有人ロケットを打ち上げ、そこからの自由落下の数分間に無重力状態を体験できる準軌道飛行サービスを始めようというのがベゾスの計画だ。

 また、サブ・オービタルの次の目標は「軌道宇宙船」の開発であり、最終的には有人飛行を目指している。

 だが、現時点ではサブ・オービタルまでの飛行実現でさえ手を焼いている。

 さらに、破天荒な実業家として世界に名を馳せるリチャード・ブランソンも宇宙を追いかけている。英国に生まれたブランソンは「ヴァージン・レコード」を作り上げ、世界有数のレコードレーベルに育てた。その後、航空会社「ヴァージン・アトランティック航空」を創業し、常識破りのサービスで世の注目を集め事業を拡大。保守的な航空業界に風穴をあける活躍を見せるなど、英国経済への貢献を高く評価され、00年には英国のエリザベス女王から「ナイト」の称号を賜っている。

 そして、ブランソンは宇宙旅行事業に参入しようと04年に「ヴァージン・ギャラクティック社」を立ち上げた。ターゲットは、ベゾスと同様にサブ・オービタル市場であり、500人の観光客を1人当たり20万ドルの料金で宇宙へ送る計画を立てている。

 マイクロソフトの創業者のひとりで億万長者のポール・アレンも宇宙を目指し、ストラトローンチ・システムズ社を共同創業者として作った。

 11年に設立した同社のロケット本体は、地上基地から打ち上げるタイプではなく、母機で所定の高度まで引き上げ、その後空中で発射し地球の低軌道を目指すものだ。とりわけ特徴的なのは、母機が非常に巨大な点にある。ストラトローンチ・システムズ社の母機は、ボーイング747ジャンボジェット機を2機、横に並べてつなぎ合わせたようなデザインで、その翼長は約117メートルと世界最大級の大きさを誇り、機体総重量は540トンを超える。母機のテスト飛行は15年に、ロケットの実験飛行は16年に予定されていて、マイクロソフト創業者の宇宙挑戦の本番はこれからだ。

 しかし、そんな彼らを飛び越えるアイデアを実行に移している億万長者がいた。42歳でスペースX社を率いる異色の経営者イーロン・マスクだ。

 南アフリカ生まれのイーロンは、せっかく入学したスタンフォード大大学院を2日で辞めてソフト制作会社を起業する。その後、インターネット決済「ペイパル」の母体となるXドットコムを創業。

 ペイパルはネットオークション企業eBayに高額で買い取られ、イーロンは手にした約170億円の資金を元に宇宙ロケットベンチャー企業「スペースX社」を創業したのだ。

 スペースXは創業からわずか6年で独自開発のロケット「ファルコン1」の打ち上げに成功すると、その約2年後には、これまた自社で作った宇宙船「ドラゴン」が、国際宇宙ステーションに民間として史上初のドッキングを成し遂げた。

 イーロンはロケットコストを従来の10分の1にし、さらに再利用できるロケットを開発しコストを100分の1にすると言う。何より彼が目指すのは「火星に人類を移住させること」。目標がとんでもなく壮大であり、ジェフ・ベゾスたちの宇宙計画とはどうも桁が違う。しかしなぜ、イーロンはそんなとんでもない目標を掲げたのだろう。

 地球の人口はすでに70億人を突破し、今世紀半ばには100億人に達するだろう。だが、地球上の二酸化炭素は増加し、温暖化や異常気象の発生、さらに水不足や食糧危機が押し寄せている。そんな地球に100億人も住めるのだろうか。イーロンは「人類はいずれ地球以外の惑星で住まなくてはいけなくなる」と結論付けた。

週刊朝日  2014年3月7日号


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