東京電力は昨年11月29日、福島県のいわき市と広野町に世界最新鋭となる石炭火力発電所を1基ずつ建設すると発表した。発電量は合計100万キロワットで、原子力発電所1基にほぼ相当する規模となる。

 この発電所は「石炭ガス化複合発電(IGCC)」と呼ばれる仕組みを採り入れる。まず石炭を可燃性ガスに変え、それを燃やしてタービンを回す。さらに、ガスを燃やすことで発生した熱も利用して水を沸騰させ、蒸気で別のタービンを回す。つまり、ガスと蒸気を使って「ダブル発電」をするのだ。通常の石炭火力は蒸気しか使わないので、「IGCC」は発電の効率が高くなる。わかりやすく言えば、「非常に燃費がいい車」のようなものだ。

 東電の新しい発電所は、2020年代の初めに運転を始める見込みだ。東電は、建設をはじめ1日あたり最大2千人の雇用が生まれることなどで福島県内の経済効果は1500億円に達するとしている。

「エネルギー需要や被災地の復興を考えても、着工の前倒しが最大の急務だと思っています」(東電幹部)

 すでに「IGCC」は、国内で1基が商業利用されている。東電や東北電力などが出資する常磐共同火力の勿来(なこそ)発電所(いわき市)にある10号機だ。発電量25万キロワットで、昨年4月に運転が始まった。その8カ月後には、連続運転時間でオランダの発電所が持つ世界記録を大幅に更新する3917時間を達成した。

週刊朝日 2014年1月17日号