みずほ総合研究所副理事長の杉浦哲郎氏は「14年の春闘では、賃上げ率は消費増税の『3%』に届かないだろう」という。杉浦氏が2014年の給料動向を予測した。

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 アベノミクス効果による円安や公共事業によって潤う業種などでは、ベースアップ(ベア)に踏み切る企業が出るかもしれません。

 その半面、慎重な企業も多い。労働組合側が連合の方針に基づいて1%以上のベアを要求しても、平均してみれば0.2~0.3%勝ち取れる程度にとどまるでしょう。春闘での貸金上昇率は、定期昇給を含めて13年をやや上回る2.2~2.3%という計算です。

 ただ、貸金水準が低い非正規社員が増える一方で正社員が減っていますから、労働者1人あたりでみれば、貸金はそんなに増えないと思います。

 前回の春闘ではベアに前向きな企業が出てきたと話題になりました。でもそれは人材集めが急務で、何年もベアを続けた伸び盛りの新興企業が中心だったと記憶しています。多くの企業で、賃上げは簡単に上げ下げできるボーナスどまり。今回も変わらないでしょう。

 企業がベアに慎重な理由は二つあります。ひとつは14年の景気が見通せないこと。日銀が発表した13年12月の企業短期経済観測調査(短観)によれば、消費増税の影響や新興国経済の減速などから、今後について慎重な見方をする企業が少なくありません。そういった企業では、冬のボーナスは厳しいかもしれません。

 もうひとつは構造的なもの。先進国では賃金抑制の動きが強まっています。(1)技術革新によって作業が機械に置き換わる(2)新興国との競争が激しくなる(3)株主の利益を優先する――といったことから、GDP(国内総生産)に占める労働所得の比率が小さくなる流れは止まりません。

週刊朝日 2014年1月3・10日号