2001年、映画『リリイ・シュシュのすべて』で女優デビュー。06年の『フラガール』で映画賞を総なめした蒼井優さん。14歳でのデビュー以来、年々、女優としての存在感を増す彼女だが、「何年か前に、急に人間関係とか、いろんなことが面倒になって、一日一日を大切に生きてなかった時期がありましたけどね」と告白する。

「その頃は、人にどう見られるかとかを、結構気にしていたんだと思います。でも、そういう投げやりな時期は、失ったものはなかったけれど、得られたものも特になかった。結局、自分がいいほうに変わっていくためには、人にどう見られるかより、自分がどう生きるかのほうがずっと重要なんですよね。どういう人と出会って、どういう経験を積んでいくのか。とくにお芝居には、そういう自分なり生き方なりが表れてしまうから。ここ数年は、毎日を丁寧に生きたいな、と考えています」

 13年は、劇団☆新感線「五右衛門ロックIII」でエンターテインメントに、ケラリーノ・サンドロヴィッチ演出の「かもめ」では古典に挑戦した。今年3本目となる舞台は、北村想さん書き下ろしの「グッドバイ」。太宰治の未完の絶筆「グッド・バイ」をモチーフにしたラブロマンスだ。

 

「台本を読んだときに、北村さんご本人が楽しんで書いたことが伝わってきました。“それをどうお客様に届けるかは、あなたたち役者の仕事ですよ”みたいな、いい意味での自由度が感じられて(笑)。役者としては、そのワクワク感を受け継いでいきたいです」

「かもめ」の舞台に立っているときに、演劇ならではの体験をした。以前なら、舞台のときは荒野に立っているような気分だったのが、このときばかりは、共演者と一緒に船に乗って、大海原に出ていくような感覚を抱いたのだ。

「信頼できる仲間と同じ船に乗って、心をひとつにして何か大きなものに立ち向かっているような感じでした。だから、たとえ予定の航路と違うところに行ったとしても、絶対にその先に光があると信じられたんです」

“役”には、それを演じる“人間”の生き方が確実に投影される。彼女の今の目標は、「舞台でも、カメラの前でも、常に“真っすぐ立てる人でありたい”ということ」なのだそうだ。

週刊朝日 2013年12月6日号