英国では「パスティ」というパイに軽減税率が適用されている (c)朝日新聞社 @@写禁
英国では「パスティ」というパイに軽減税率が適用されている (c)朝日新聞社 @@写禁

 消費税率が来年4月、8%になる。それだけでも深刻なのに、その1年半後には10%まで引き上げられる予定だ。消費税は食料品をはじめ毎日買う商品にも一律にかかるだけに、年金で暮らす高齢者や、中小企業には大きな打撃となる。そのダメージを和らげるのが「軽減税率」だ。欧州各国では、食料品や水道・電気料金など毎日必要となる商品やサービスには、本来の税率より低い軽減税率を導入している。公明党はこれに関する具体的な案を提示しているが、一方で自民党や財務省は消極的。大きく分けて三つの問題があると指摘している。

 その問題とは、(1)税収が減る(2)軽減税率を適用する品目と除外する品目の「線引き」が難しい(3)食料品店など事業者の作業が複雑になる――というものだ。

 具体的に見ていこう。まず、軽減税率の導入に伴う税収の減少はどの程度なのか。公明党案では、食品全般に軽減税率を適用した場合、減収は1%当たり年間約5千億円だとする。仮に税率を8%に据え置けば2%分、つまり約1兆円の税収が失われる計算になる。消費税の税収は今年度、10.6兆円と見込まれる。

「消費税率の引き上げを決めた民主、自民、公明の3党合意では増税分は社会保障の充実に使うことになっていた。軽減税率を導入して税収が減れば、その分の代替財源が必要になってきます」(中央大学法科大学院の森信茂樹教授)

 問題の二つ目、軽減税率を適用する品目をどう決めるのか、「線引き」は難しい。実際、欧州でも苦労しているようだ。フランスでは、食料品には5.5%の軽減税率が適用されている。フォアグラやトリュフは、国内産業を保護する意味から対象となっている。ところが、キャビアは高級品、輸入品であるとの理由で19.6%の標準税率がかかる。ドイツでは、同じハンバーガーでも、持ち帰りにすると食料品扱いで軽減税率(7%)となるが、店内で食べると外食扱いになり、標準税率(19%)となる。

「日本でもデパ地下の食料品売り場やコンビニでは、買ったものを店内で食べられるイートインのお店が増えています。同じ食料品でも、外食サービスとの区別をどうするのかも非常に難しい問題なのです」(前出の森信教授)

 生活必需品かぜいたく品か、持ち帰りか外食か。同じ店で売っている食料品であっても品目によって複数の税率が存在すれば、それらをきちんと把握しなければ、消費者に商品やサービスを提供する側の事業者は正確な納税ができない。これが問題の三つ目だ。

週刊朝日 2013年12月6日号