「夫の母」は「息子の妻」をいびり倒し、いつしか大げんかに発展……。古今東西、そんなイメージで語られる「嫁姑問題」が、最近の日本では、少し変わってきているという。一説によれば「夫の母」が弱体化した、とも。

 本誌では20~40代の嫁と50代以上の姑、それぞれ500人へアンケートを実施。50代以上に「『息子の妻』に、期待することや望むこと」を複数回答で聞いたところ、1位が「夫婦円満でいてほしい」で半数近くに達した。だが、2位は「何も期待しない」(28.1%)、3位も「あまり期待することも望むこともない」(21.1%)。同居や介護といった具体的な注文はごく少数にとどまり、謙虚ささえ漂う。「『息子の妻』への不満」も「特にない」が7割以上で断トツだ。

 義母なぜ、ここまで弱くなったのか。

 社会が劇的に変化した高度成長期を生き抜いた団塊世代前後。『姑の言い分 嫁の言い分』の著者でノンフィクション作家の今井美沙子さんは、その高い順応性が影響していると分析する。

「急激に変わる価値観に敏感に反応していた。盾突くよりもかしずき、いちいち腹を立てて摩擦を招くより割り切ってやり過ごす。そのほうが楽なのだと経験から知っているんです」

 さらに、息子世代の結婚難や晩婚化も指摘する。

「息子が晩婚ほど、その妻の立場は強くなる。いつまでも未婚のわが子を心配する親が増え、最近は60代でも『おばあさん』になれない。だから孫を出産した妻は『産んであげた私』として、ますますパワーアップしていく」(今井さん)

 長男夫婦と同居7年のDさん(64)もかつて「嫁いびり」で悩まされた。男女で食事内容に差があり、男性より先の入浴などもってのほか。義母は、別の女性に向かい「あなたがうちの嫁だったらよかったのに」と目の前で言い放つほど意地悪だった。

「私のような思いは絶対にさせられない。息子は生涯未婚とあきらめていたから、結婚してもらえただけで御の字。自分のせいで夫婦仲が悪くなったら大変」(Dさん)

週刊朝日 2013年11月22日号