宮崎駿は「スタッフの個性殺しかねない」? 〈週刊朝日〉|AERA dot. (アエラドット)

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宮崎駿は「スタッフの個性殺しかねない」?

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引退会見で鈴木敏夫さん(左)と握手する宮崎監督(撮影/写真部・関口達朗)

引退会見で鈴木敏夫さん(左)と握手する宮崎監督(撮影/写真部・関口達朗)

 日本アニメの巨匠・宮崎駿監督(72)が、公開中の「風立ちぬ」を最後に長編映画製作から引退する、と世界中の記者たちの前で発表した。これまで何度も引退宣言を繰り返してきたが、今回は本当なのか? カリスマ不在のスタジオジブリはどうなるのか?

 宮崎さんは6日の会見でジブリの今後について、「やっと上の重しがなくなるんだから、こういうのをやらせろ、という色々な声が若いスタッフから出るのを願っている。それがなきゃダメです」と言った。だが、これを額面どおりには受け取れない。徹底的に自分の意思を貫く宮崎さんの作品づくりは、裏を返せば「スタッフの個性を殺しかねない」という側面があった。

 例えば宮崎さん自身が脚本・絵コンテを手がけ、実際の作画は信頼するアニメーター・近藤喜文さんに委ねて制作した「耳をすませば」。この作品では、近藤さんが得意とする繊細な心理描写が、宮崎アニメとは異なる魅力を放っている。それを宮崎さんは、近藤さんの個性として認めなかった。鈴木敏夫プロデューサーも著書「風に吹かれて」で、宮崎さんについて「他人のいいところを生かして、あるところに導くっていうことには最もふさわしくない先生」としている。絶対的服従と献身を求めてきたジブリのスタッフにいきなり自発性を求めても難しいのではないか。

 では、ジブリは今後、どうなっていくのだろう。鍵になりそうな一人が細田守監督だ。45歳。「サマーウォーズ」(2000年)、「おおかみこどもの雨と雪」(12年)など、一般観客向けアニメでヒット作を連発する稀有(けう)な存在だ。鈴木プロデューサーも先の著書の中で「麻呂(米林宏昌監督のあだ名)も宮崎吾朗君もやっぱり宮さんの子ども。だが、細田守は色々な映画から(表現を)引っ張ってくる。それは悪いことじゃない」と記す。

 実はかつて、ジブリで「ハウルの動く城」の監督をするはずだった。ところが製作自体が中止になり、後に企画が再始動して宮崎さんが監督した。細田さんは当時「監督としての自分は終わり」と思うほどショックを受けたという。だが、今回の「風立ちぬ」については「こんなにいい映画はいままでになく、そしてこれからもない、というくらい、いい映画でした」と絶賛し、ジブリへのわだかまりがないことを示した。かつてジブリを追われた監督が、窮地のジブリに戻り、新風を吹き込む――そんなドラマも想像できる。

 もう一つの可能性はやはり、宮崎さんの復活だ。わき起こる創作意欲を抑えきれず、執念で最後の作品に挑む。それこそジブリファンが捨てきれない夢だろう。

週刊朝日  2013年9月20日号


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