「橋下バッシング」で一番得をしたのは安倍政権? 〈週刊朝日〉|AERA dot. (アエラドット)

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「橋下バッシング」で一番得をしたのは安倍政権?

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 日本維新の会共同代表・橋下徹大阪市長の従軍慰安婦についての発言に、国内外から強い批判が向けられている。ジャーナリストの田原総一朗氏は、橋下氏の発言には自民党議員の本音が隠れていたのではないかと話す。

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 橋下徹という政治家は、いまやアメリカをも含む国内外の大批判を浴びて、言葉を失っているようだ。従軍慰安婦をめぐる発言がこのような結果になるとは、橋下氏自身、予想もしていなかった。そこで、唐突に米軍によるオスプレイの訓練を大阪・八尾空港で行わせるという話を持ち出してきたのではないか。

 橋下氏が主張するように、確かに第2次世界大戦中には、アメリカ軍、ドイツ軍、ソ連軍など、多くの国の軍隊に慰安婦は存在していた。それにしても、なぜこの時期に、橋下氏は慰安婦問題についての発言に及んだのだろうか。

 安倍晋三首相が4月に「村山談話」について「そのまま継承しているわけではない」と発言すると、韓国、中国、アメリカが反発した。安倍首相が昨年9月の総裁選で慰安婦問題をめぐる「河野談話」の見直しを示唆していたことも絡めて、4月末には米国紙がいっせいに批判。慰安婦問題が国内での指示を高める反日キャンペーンの目玉になっている韓国の朴槿恵大統領も、やはり日本を厳しく批判してきた。唐突に思える橋下発言の背後には、こうした状況があったのだ。

 慰安婦はアメリカなど各国の軍にも存在し、韓国軍にもいたではないか。なぜ日本だけが非難されなければならないのか。橋下氏はこういうつもりで発言したのだろう。そしてそれは、実をいえば、少なからぬ日本人も感じていたことではないか。

 もちろん、軍が女性を性の道具にすることが容認されるはずはない。だが、橋下氏は、日本のマスコミが批判することは百も承知で、あえて誰も言わないタブーをぶち破るつもりで発言したのではないのか。だからこそ、新聞やテレビが批判を重ねても、彼は徹底的に反論したのだ。

 新聞やテレビは当初、橋下発言の批判者を登場させながらも、橋下氏の反論を必ず紹介していた。つまり、「論争」のかたちでの報道だった。橋下氏も取材にはとことん応じた。彼は自信があったのだ。

 野党はもちろん、政府や自民党の幹部も橋下氏を批判した。しかし、橋下氏は次のようにとらえていたのではないか。自民党の政治家たちは内心は自分の言うことはもっともだと考えている。だが立場上、あるいは度胸がなくてそれは言えない。代わりに本音を言ってやっている自分に、口では批判しても内心は感謝しているはずだ、と。だからこそ、自信を持っていたのではないか。

 だが、流れが変わったのは5月27日に日本外国特派員協会で、橋下氏が2時間半にもわたって熱弁をふるった記者会見だ。この会見には300人を超える記者たちが集まった。橋下氏はこの記者会見のために、「私の認識と見解」という和文、英文の長文の資料を用意した。彼としては万全を期したつもりだったろう。

 だが、実は会見の内容は問題ではなかったのである。会見後、多くの日本人記者は橋下氏を追わず、外国人記者たちのコメント取りに懸命になった。自分が聞いてとらえたことに自信が持てず、ひたすら外国人記者のコメントに頼ろうとしたのだ。

 外国人記者たちの批判、とくに国連の拷問禁止委員会による批判が決定打となり、日本のマスコミは橋下大バッシング一色に舵を切った。そして安倍政権は、まるで橋下氏を身代わりにするように、いつの間にかバッシングから逃れることができたのである。

週刊朝日 2013年6月21日号


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