ここのところ急上昇を続けていた日経平均株価が5月23日に大暴落した。しかし、それでも投資家は強気の姿勢を崩さない。

 米金融大手、ゴールドマン・サックス証券は24日、こう題したリポートを発表した。23日の急落について、「ファンダメンタルズ(経済の基礎的条件)要因ではなく、日経平均が過去6カ月で80%急騰した後のスピード調整と利益確定売りによるもの」と説明した。

 つまり、異常な速さで上昇してきただけに、いったん立ち止まってもおかしくない状況だったというのだ。そうした見方を反映するように、24日の日経平均は最終的に128円高となり、アベ相場は力強さを見せた。

 MCPアセット・マネジメント証券の井上哲男チーフ・ストラテジストが言う。「上昇相場に調整はあること。今回の下げは、世界的な連鎖安を起こすようなものではなく、大きな上昇トレンドは崩れていない」。

 専門家5人に年末の日経平均株価の見通しを聞いたところ、5人すべてが現状より高い水準を予想した。岡三証券日本株式戦略グループ長の石黒英之氏にいたっては2万1千円と予想している。つまり、専門家は、23日の大暴落があっても、なお今年中はアベ相場の上昇トレンドが継続するとみているのだ。

 これだけ強気になれる根拠は、どこにあるのか。専門家が口をそろえて挙げるのが、日本企業の復活である。SMBC日興証券株式調査部部長の西廣市氏が力説する。

「米景気は緩やかながら回復に向かっている。これを受け、為替はドル高基調。裏を返せば、円安が進み、輸出企業を中心に業績上振れ期待があるのです」

 SMBC日興証券の集計によると、5月20日までに発表を終えた東証1部上場企業が予想する今年度の経常利益は前年度比20.4%増と、V字回復する見通しだ。前年度は同9.4%増にすぎなかった。

 驚くのは、まだ早い。業績はこの水準から、もう一段大きく上回る可能性が高いとみられているのだ。

 その理由は、「今年度の業績予想の前提となる為替レートが、足元の為替水準と比べると非常に保守的」(西氏)だからだ。

 例えば日産自動車とホンダが1ドル=95円、トヨタ自動車が1ドル=90円など、主な輸出企業が想定している為替レートは、1ドル=90~95円だ。このところの水準(1ドル=100~103円ほど)に比べると、かなり円高の水準である。

「対ドルで1円円安になるだけで、年間の営業利益が何百億円も増える。年後半にかけて業績予想を上方修正する動きが相次ぐ可能性が十分にある」(あるストラテジスト)

 実際にゴールドマン・サックス証券は為替レートを1ドル=107円と設定し、今年度の経常利益を同53.1%増と予想している。

「世界を見渡しても、ここまで業績が急回復する国はない。外国人投資家はこれからも日本株の投資比率を上げざるを得ないでしょう」(前出の井上氏)

週刊朝日 2013年6月7日号