作家・柚木麻子が今期最もぐっときたドラマはテレ東の… 〈週刊朝日〉|AERA dot. (アエラドット)

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作家・柚木麻子が今期最もぐっときたドラマはテレ東の…

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週刊朝日#ドラマ

 この春始まったドラマの数々。「ドラマは贅沢な娯楽」と話す作家の柚木麻子(ゆずき・あさこ)さんが、イチ押しドラマを教えてくれた。

*  *  *
「空飛ぶ広報室」(TBS系、日曜夜9時)はテンポのよい、自信に満ちあふれた作品です。航空自衛隊全面協力をうたうだけあり、普通なら絶対に見られない映像が盛りだくさん。女性テレビディレクターを演じる新垣結衣は融通のきかなさがはまっているし、なにより柴田恭兵扮する空幕広報室長のテンションの高さとハッタリ、常にひらひらと動き続ける手の遊びがきいています。実在の組織を描くとどうしてもぎこちなさが出るものですが、有川浩作品(原作)の力か、今のところごくスムーズ。

 さて今期、私が一番ぐっときているのは「めしばな刑事(デカ)タチバナ」(テレ東系、水曜深夜)です。中年刑事たちが立ち食い蕎麦(そば)や袋入りラーメンについて延々と議論するという異色ストーリー。固有名詞がふんだんに登場する原作漫画をテレビでどこまで再現できるのか不安でしたが、初回から企業名を連発していて男気を感じました。「幽(かす)かな彼女」(フジ系、火曜夜10時)にも出演している陰の人気者、佐藤二朗のくたびれたぬいぐるみのようなたたずまいが愛おしい。手ブラ騒動で先行きの危ぶまれたAKB河西智美ですが、刑事たちを冷ややかに見つめる甘党の婦警役にはまっています。テーマ曲のクレイジーケンバンド「SOUL FOOD」が流れる中、「富士そば」を前にして佐藤がキメ台詞(ぜりふ)「しょっぴくぞ!」を言い放ち、登場人物全員がひたすら食べまくるオープニングの入り方が実に見事。働く男のささやかな喜びとチャームにあふれていて、週半ばに見る深夜ドラマとしてこれ以上ない良作だと思います。

 さて、テレビドラマがつまらなくなったといわれますが、理由はただひとつ、テレビドラマを見る人口が激減したからです。「おもしろいものが何より好き」な目利きたちがここ10年でテレビを離れ、ネットに移ってしまいました。鋭い観察眼やユニークな視点で周囲から一目置かれる人から、「あのドラマ、おもしろいよ」と職場や学校でおすすめされる機会を、誰しもが失ってしまったのです。ドラマの作り手側だって、頑張っても話題にならず、数字が伸びないから予算もかけられず、やる気が出るわけもありません。

 しかし、楽しみにするドラマがあるだけで、1週間の流れは確実に変わります。3カ月の間、動き続ける架空の世界をリアルタイムで追いかける――。見落としがちですが、ドラマ鑑賞とは心を自由に飛ばすことができる、とても贅沢な娯楽ではないでしょうか。

週刊朝日 2013年5月3・10日号


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