シャープは3月6日、韓国・サムスン電子からの出資を受け入れると発表した。両社は液晶テレビなどで激しい競争を繰り広げてきたライバルだったが、一転、提携関係に。シャープ関係者によると、今回の提携には技術供与やサムスンからの役員受け入れは含まれていないという。

 だが、「製造工程を見るだけでもサムスンが得るものは大きいはず」(SMBC日興証券の白石幸毅シニアアナリスト)だという。

「大株主」としてサムスンから「工場を見せてくれ」と言われれば、そう簡単に断れるものでもないだろう。人事交流などを求めてくることだって考えられる。実際、韓国企業に対して、日本メーカーは過去に苦い経験をしたことがある。

 大手家電メーカーOBは、韓国メーカーがある電子機器を開発していた時期のことをこう振り返る。韓国勢は先行する日本メーカーの技術者を、秘書や専用車を付けるなどの好待遇を提示して何百人単位で引き抜いたそうだ。日本では部長だったが韓国で役員になった人も少なくなかったという。

 勤務先には内緒にしてもらって、アルバイトで金曜日夜から月曜日朝まで韓国に来て仕事をしてもらうこともよくあったようだ。

 ある日本メーカーでは、「技術者のパスポートを取り上げろ!」という、半ば冗談、半ば命令が飛び交ったという。

 シャープにとって「液晶パネル技術は命脈」(先の関係者)なだけに、おいそれと外に出せるものではない。しかし、「背に腹は代えられない」と、融資する銀行側の姿勢は厳しかったようだ。

週刊朝日 2013年4月5日号