株価暴落の淵にいた経営再建中のシャープだが、12月4日に米半導体大手クアルコムとの資本・業務提携を発表して以来、一息ついた形だ。とはいえ、「液晶の雄」と言われ、5年前には1株2000円もつけていたのが、いまや300円前後という低迷ぶり。しかも、業界では「投資銀行出身の男が暗躍し、シャープを追い込んでいる」(証券関係者)という怪情報まで飛び出したのだ。

 シャープ株の大量売りが始まったのは8月初め。シャープの業績下方修正のほか、台湾の鴻海(ホンハイ)精密工業との資本提携交渉の見直しなどが報じられ始めたころからだ。両社は3月下旬、2013年3月までにシャープ本体に鴻海が9.9%出資することで合意した。取得価格は1株550円。ところがその後、ズルズルとシャープの株価が下がり続け、8月3日になって鴻海は、台湾証券取引所に資本提携の条件見直しを公告した。

「火に油を注いだのはシャープ側の対応です。この鴻海の公告について、シャープは否定コメントを出し、しかも独断で『資本提携維持』の発表もした。こうした“すれ違い”が、双方のさらなる不信感につながった」(業界関係者)

 結局、鴻海との出資交渉は滞ったまま、市場関係者の間でシャープの評判はガタ落ち。ついには、4500億円という過去最大の最終赤字予想まで発表した。そんな中、業界でこんな情報が流れたのだ。

「鴻海がなにやら仕掛けている、という話です。どうも鴻海側に、日本人のコンサルタントが裏方としてついたらしい。その男は投資銀行出身だとかで、それがうまいこと交渉を進めて、シャープを追い込んでいる、と。発信源はシャープの経営陣首脳クラスで、彼らが周囲に、その対応策の相談を持ちかけたのです」(金融関係者)

 中国企業の裏で日本人コンサルが暗躍!? この“ミスターX”を巡ってメディアの取材合戦が始まったのだが……。

「いくら探しても、そんな人物が見当たらない。そのうち、『本当はいないんじゃないか』『シャープの自作自演なんじゃないか』という話に落ち着いた。ミスターXを持ち出して、提携話が進まない“言い訳”にしているのでは、という見方です」(経済部記者)

週刊朝日 2013年1月4・11日号