男性の4人に1人が発症するといわれる鼠径(そけい)ヘルニア鼠径。男女比は4~5対1だが、女性にも起こる。手術は比較的簡単なため、虫垂炎、痔と並んで、若い医師でもできる治療だ。

 ヘルニアには、三つの種類がある。鼠径部には、鼠径管という管があって、男性なら睾丸(こうがん)に行く血管や精液が通る精管が、女性なら子宮を支える子宮円靭帯(じんたい)が通っていて、おなかと外側をつないでいる。管の中の血管や靭帯に沿ってヘルニアが出てくるものを外鼠径ヘルニアという。それ以外の場所で筋膜組織が弱くなった部分から出てくるものを、内鼠径ヘルニアという。もう一つは、下肢への動静脈が通る大腿輪(だいたいりん)に沿って出てくる大腿ヘルニアだ。外鼠径ヘルニアは子どもや若年層に多く、内鼠径ヘルニアは高齢者に多い。大腿ヘルニアは高齢の女性に頻発する。

 いずれも、標準的な治療は手術で、飛び出た腸を戻し、ヘルニア門にメッシュという化学繊維でできた網状のガーゼのようなものを縫い付けて閉鎖する。手術自体は簡単で、若手の外科医が手がけることが多い。術式は多数あり、メッシュを置く位置や種類などで差があって、どの術式にも一長一短がある。また最近は、手術よりも切開が小さくてすむ、腹腔鏡(ふくくうきょう)を使った治療も注目され始めている。

「再発率は、専門の医師が手術をすれば、どの術式でも1%以下という成績です。現在、私たちのチームでの再発率は、0.3%です」(東京慈恵会医科大学第三病院、外科 諏訪勝仁医師)

週刊朝日 2012年11月9日号