自民党総裁選が告示され、5人の立候補が連日ニュースで取り上げられている。早稲田大学国際教養学部の池田清彦教授は、政権交代を目指す自民党の動きをノーテンキだと指摘する。

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 民主党は終わっていると思っていたら、自民党はさらに終わっていた。どこぞの劇画の科白じゃないが、「お前らはもう死んでいる」と言いたくなるほどの惨状である。
 自民党の谷垣総裁が衆議院をなるべく早く解散させて総選挙に勝利し政権を奪取したかった気持ちはわかる。しかし政権を取って何がしたいのかね。消費税増税も、原発依存も、というのであれば、それを争点に選挙を闘えばよいではないか。しかし、国民の多くは消費税増税も、原発依存も望んでいないようだとの世論調査が出て、これを争点にしては選挙に負けることは確実なので、民主党政権の間にこの二つを決めさせて、すぐに選挙との虫の良いことを考えていたのであろう。それで、ひたすら民主党の悪口を言って選挙戦を闘えば何とかなると思っていたのかもしれないね。
 何という勝手読み、何というノーテンキ。政権を攻撃している最大野党が衆議院に提出された内閣不信任決議案に賛成しない時点で、谷垣の命運は尽きたのだ。野田首相が、近いうちの衆院解散を表明したことを評価して、決議案の採決を欠席し、不信任案の否決に協力した、とのことだが、有権者をバカにするにも程があると思う。
 森喜朗が、解散を約束する首相なんているわけがない、と言ったそうだが、完全に野田にはめられたのだ。参議院に提出された首相問責決議案に賛成するに至っては笑止という他はない。この決議は、民・自・公の三党で合意した消費税の増税法案を糾弾しているのだから、自分で自分を否定しているわけだ。自民からただ一人、丸山和也が茶番劇だと言って採決を棄権したそうだが、他の議員は木偶(でく)の坊かしら。

※週刊朝日 2012年9月28日号

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