東電は8月30日、福島第一原発(フクイチ)の1~3号機原子炉に注入している冷却水の量が必要量を下回ったことを発表した。とても小さい記事だったが、この原因を探っていくと、現在のフクイチの"重大な危機"が見えてくる----。フクイチで働くジャーナリストから怒りのルポが届いた。

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 いまの原子炉冷却は、「循環注水冷却システム」と呼ばれ、放射性物質で汚染された水を、除染装置を使って汚染濃度を下げ、再び原子炉に注水する形で進められている。各装置をつなぐためのホースは全長4キロあるが、10~50メートル間隔で継ぎ手があり、その部分を作業員が接続加工している。加工する際、ポリエチレン製のホースを電動のこぎりで切断すると、削りかすが出るため、作業員は、紙タオルなどで削りかすをふき取るようにしている。
 現場の作業員は言う。「冷却水量が少なくなったのは、大量の削りかす、あるいは紙タオルでホースが詰まったのが原因でした。東電から証拠の写真を見せられて、現場監督は青ざめていました。ゴミをホースの中に残したまま接続してしまったのだから、それも当然です。例えて言うなら、手術中に体内にガーゼを置き忘れてしまったような初歩的なミスですから」。
 原因不明の注水量低下は、初歩的な人為ミスだったのだ。なぜ、こんな単純ミスが起きたのか。現場を知る別の作業員が言う。
「ポリエチレン製ホースの交換工事をしている作業員は、素人同然の人たちが多く交じっています。現場は高線量の場所が多いので、腕のある職人が線量オーバーでどんどんいなくなり、工事経験のない人たちを訓練もしないで現場に送り込んでいるのです。起きて当然のトラブルです」

※週刊朝日 2012年9月21日号